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岡山県済生会創立80周年 岡山済生会総合病院の山本院長に聞く

山本和秀院長

内視鏡手術支援ロボット「ダヴィンチ」

腎臓病・糖尿病総合医療センター

「済生・救療」の精神のもとに

 岡山済生会総合病院(岡山市北区国体町)を中核施設とする岡山県済生会は、「済生・救療(生命を救う道を広める)」の精神のもとに創設された恩賜財団済生会の岡山診療所として1938(昭和13)年に開設して以来、80周年を迎えました。一貫して「社会的弱者」の立場に立ち、保健・医療・福祉を3本の柱として活動、2016年には新病院が開院し新たな体制で地域医療を担っています。超高齢社会を迎えた今、求められる役割などを総合病院の山本和秀院長に聞きました。聞き手は山陽新聞社の阪本文雄監査役。(文中敬称略)

 ―岡山済生会総合病院が済生会岡山診療所として船出してから80周年。岡山の医療を担う拠点病院になっています。

 山本 内科を主とした診療所として開院して以降、「済生・救療」の精神のもとにへき地医療、救急医療、予防検診など地域住民の健康と福祉の向上に努めてきました。瀬戸内海の離島住民のために巡回診療船「済生丸」を就航させた3代院長・大和人士、国民病と言われた胃がんに敢然とメスを振るい、生涯胃がん手術数3701例に及ぶ4代院長・間野清志、間野の指導を受けた外科医で5代院長・片岡和男、6代院長・広瀬周平らは、常に最先端の医療・福祉を地域に提供しようと奮闘してきました。この伝統は今でもしっかりと受け継がれています。

 ―2016年、岡山市北区国体町に「岡山済生会総合病院」、2018年、創立の地である同伊福町に「岡山済生会外来センター病院」として生まれ変わりました。

 山本 総合病院は入院診療と救急医療、一部専門外来が中心で、外来センター病院は外来診療が専門。入院と外来を分ける「入外分離」方式を取り入れることで、総合病院は急性期病院として重症患者への対応やがん、難病診療などの機能が充実したうえ、外来患者さんの出入りがないため入院患者さんに静かな環境を提供することができています。両病院間が約200メートル離れていることから、患者さんやスタッフの移動のため、約15分間隔でシャトルバスを運行して不便解消に努めています。災害拠点病院として耐震・免震機能が強化できたことも大きなメリットです。

 ―内視鏡手術支援ロボット「ダヴィンチ」を導入しました。

 山本 高齢社会の進展とともに、がんで亡くなる割合も増えています。求められているのは体への負担が抑えられる低侵襲の治療。ダヴィンチを使うことで、体力が弱った高齢者にもさまざまな手術を行うことができます。今年10月には第1例となる大腸がんの手術を行いました。今後症例を重ねるとともに、子宮がんや卵巣がんといった婦人科、泌尿器科などへも活用の場を広げていきます。

 ―がんゲノム医療がこれからの医療の中核になりますが。

 山本 がん患者の遺伝子を調べ、その患者さんに合った最適な薬や治療法を選ぶ、いわば「テーラーメード」の治療です。例えば免疫治療薬「オプジーボ」も、どの患者さんにも必ず効果があるというわけではありません。一人ひとりの体質や病状に合わせて治療できる体制づくりが全国的に進められており、当院もその取り組みを進めています。10年後にはがん医療の中心になっていくでしょう。

 ―時代とともに岡山済生会総合病院への地域医療のニーズも変化しています。

 山本 超高齢社会を迎えた現在、急性期を脱し病状が安定しても、退院して日常生活が送れるか不安を持たれる高齢者や在宅で療養中の方で暫時入院が必要な方は少なくありません。外来センター病院は回復期機能を専門とする病院として、しばらく入院を続け安心して退院できるお手伝いをする「地域包括ケア病棟」を整備しました。訪問看護ステーションも併設しています。また世界的に透析患者が増加していることから、原因となる糖尿病と腎臓病を総合的に診察できる「腎臓病・糖尿病総合医療センター」も設けており、あらゆる領域の専門知識を集約し合併症対策などに取り組んでいます。さらに病気にならないための予防医療も重要です。「岡山済生会予防医学健診センター」では岡山県内初の男女別エリアやMRI(磁気共鳴画像装置)を使用した全身がんドックなど最新施設で住民の健康をサポートしています。

 ―岡山県済生会には恩賜財団として長い取り組み・蓄積があり、地域住民からの医療、福祉、介護など幅広い対応が求められます。

 山本 恩賜財団済生会の目標は、生活困窮者への無料・低額診療、地域医療への貢献、医療・福祉・予防医学の連携です。この3本柱を中心に先進的医療、がん診療、救急医療、へき地医療などの地域医療を推進し、拠点病院としての重責を担っていきます。

 やまもと・かずひで 岡山大学大学院を卒業後、カナダ・トロント大学に留学。2005年岡山済生会総合病院副院長、07年岡山大学大学院消化器・肝臓内科教授を経て15年4月から現職。赤磐市出身。70歳。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2019年11月25日 更新)

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