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(4)上手に食べて元気に長生き 岡山ろうさい病院栄養管理室長 福島由江

栄養不良の可能性のある患者に適切な栄養管理を行うため、毎週1回、NSTカンファレンス、回診を実施している

福島由江栄養管理室長

 現在日本人の平均寿命は男性81・25歳、女性87・32歳と世界最長寿国である一方、2016年の「健康寿命」と「平均寿命」の差は男性8・84年、女性12・35年であり、このギャップを縮めることが超高齢社会日本の課題といわれています。

 高齢になると若いころより体の筋肉や水分が減り、体力も落ちてくるため、容易に低栄養に陥ってしまいます。低栄養とはエネルギーとたんぱく質が不足した状態、健康な体を維持するのに必要な栄養素が足りない状態をいいます。低栄養状態は筋たんぱく質の分解を加速させ、さまざまな症状=図1=を引き起こします。

 それらが重なってくると、食べる力が失われ、寝たきり状態や死に至る危険性も高くなります。やせた人は肥満の人より死亡率が高い傾向も報告されています。栄養状態の維持、筋力低下の予防には「栄養」と「運動」が重要とされています。ここでは普段の食生活に簡単に取り入れることのできる食事のポイントを紹介します。

 【1】食事は主食(ごはんやパン)、主菜(肉や魚のおかず)、副菜(野菜のおかず)をそろえて、3食バランスよく=図2

 【2】肉、魚、卵など良質たんぱく質を欠かさずに。

 筋肉を構成する筋たんぱく質は合成と分解を絶えず繰り返しています。食事からたんぱく質を十分に摂取していれば合成され、不足すれば筋たんぱく質が分解され、筋肉量も減少します。

 【3】牛乳・乳製品でカルシウム、ビタミンDを補給。

 骨折しにくい体を作るには、骨量不足にならないように食事でカルシウムやビタミンDを補給することが大切です。牛乳が苦手な方はヨーグルトやチーズなどの利用をおすすめします。

 【4】筋肉の材料になる「BCAA」を多く含む食品を。

 体内で作ることのできない9種類の必須アミノ酸のうち、バリン、ロイシン、イソロイシンを「BCAA」と呼び、筋肉でエネルギー源となり、筋たんぱく質の合成を促し、運動による筋たんぱく質の分解を防ぐ働きをしています。BCAAは鶏卵、マグロの赤身、大豆・大豆製品、牛乳などに多く含まれています。

 【5】食欲がないときは1回の食事量を減らし、少量ずつ回数を分けてみるのも有効。

 アイスクリームやプリン、チーズなどは食欲がない時でも食べやすく、少量でエネルギーやたんぱく質の補給ができます。また、最近では栄養補助食品もゼリーやプリンのようにデザート感覚で食べられるタイプのものや手軽に栄養補給ができるドリンクタイプのものも市販されています。

 当院では栄養サポートチーム(NST)が設置され、医師、歯科医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、臨床検査技師、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士、歯科衛生士、医療ソーシャルワーカーが連携して、患者さんの病状に合わせた適切な輸液、薬剤、食事、経腸栄養、嚥下(えんげ)訓練、口腔(こうくう)ケアなどの提案を行い、栄養状態の改善を目標に、治療の効果が上がるよう入院から退院までを通して多職種での支援を行っています。

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 岡山ろうさい病院(086―262―0131)

 ふくしま・よしえ 1989年から岡山ろうさい病院勤務。2019年から栄養管理室長。日本糖尿病療養指導士、病態栄養専門管理栄養士、栄養サポートチーム専門療法士。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2019年12月02日 更新)

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