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15 鼻血 頻度が高い場合受診を

 五歳の男児。先週くらいから発熱や鼻水を伴う風邪気味でした。ここ二日は症状が少し落ち着いた感じでしたが、まだ鼻水が続いていました。昨日幼稚園で鼻血が出たことを担任の先生から言われましたが、帰宅したときには止まっていたのでそのままにしていました。今朝顔を洗っていて突然鼻と口から出血し、なかなか止まらないので心配になり受診しました。

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 顔面から大量に出血する鼻出血は、非常に大きなインパクトがあり恐怖感や不安感を与えます。前触れもなく突然出血をしたり、外出中や学校でも繰り返し出血することもあり、対処に困ることも少なくありません。

 小児の鼻出血の原因は鼻の中のキーゼルバッハ部位といわれるところからのことが多く、90%以上がここからだといわれています。キーゼルバッハ部位は鼻中隔(鼻の中を仕切っている真ん中の壁)の前方で、血管が密に走行しており血流が豊富で、入り口部に近いため指などの外界刺激による損傷を受けやすく、容易に出血してしまいます。

 アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎が背景にあることも多く、鼻の違和感や鼻詰まりがあり、鼻をほじったり触ることで鼻粘膜に傷が付いてしまい出血します。幸いこのタイプの出血は命にかかわるようなことは少ないと考えられます。

 しかし時として血液疾患や 腫瘍 ( しゅよう ) 性疾患などの重篤な疾患の初発症状のこともあるので注意が必要です。あまり頻度が高い場合や止血困難なときは、やはり耳鼻 咽喉 ( いんこう ) 科を受診され、鼻の中の診察や血液検査を受ける必要があるでしょう。また特定の薬剤を内服している場合にも出血を来すことがあるため、内服している薬の確認が必要になります。受診されるときは忘れずにお薬手帳などを持参しましょう。

 来院時には既に止血しているケースも多いのですが、出血が続いており出血部位の確認ができれば止血処置を行うことになります。出血部位を止血剤の付いた綿球などで圧迫することができれば比較的容易に止血が可能です。それだけでは止血を得られないときは、ガーゼや止血材料によるパッキングを行ったり、電気凝固を要することがあります。

 成人の場合は数日間鼻の中にガーゼを留置するような大出血を来す場合も少なくありませんが、小児の場合は局所の圧迫だけで止血可能なことが多いようです。しかし、止血処置に子どもの協力が得られない場合は、体を押さえつけて処置をしなければならないこともあります。

 よく鼻血が出ると上を向いて首の後ろをたたいたり鼻の付け根を冷やしたりするよう言われたりしますが、これには根拠がありません。小鼻のところを指で軽くつまんでやることが一番効果的です。また上を向いたり仰向けに寝たりすると血液を飲み込んでしまうため、座って軽くうつむき口の中に出てきた血液は飲み込まないようにした方がいいでしょう。鼻の中に物を詰めると取れなくなったり、かえって傷を広げることがあるのでお勧めしません。

 日常生活では必要以上に鼻を触らないことに気を付けなくてはいけません。繰り返すことも多いですが、鼻炎や副 鼻腔 ( びくう ) 炎がある場合はそちらの治療を頑張りましょう。

 (冨永進・岡山大耳鼻咽喉科助手)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年02月04日 更新)

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