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投薬効果 抗体で予測 肺がん免疫治療薬2剤

岡三喜男特任教授

 川崎医科大(倉敷市松島)免疫腫瘍学教室の岡三喜男特任教授らの研究グループは、肺がんの免疫治療薬「オプジーボ」「キイトルーダ」について、体内の特定のタンパク質の有無を調べることで投与後の効果を予測できることを突き止めた。採血して検査すれば分かるといい、簡単で安価なのが特徴。近い将来の実用化を目指している。

 免疫治療は、手術が不可能な進行肺がん患者が主な対象。2剤は肺がんの代表的な治療薬として知られ、ほかのがんへも保険適用が広がっている。一方で、薬価が高額な上、投与しても効き目のある患者は2~3割程度しかいないとされ、事前に効果を把握できるよう検査方法の開発が世界中で進められている。

 岡教授らは、肺がん患者だけに増加が見られる「XAGE1」「NY―ESO―1」という2種類の抗原(タンパク質)を“異物”と見なして攻撃する2種類の抗体(タンパク質)に着目。オプジーボかキイトルーダを投与した患者75人の血液を調べ、これらの抗体の有無と治療効果の関係を分析した。

 その結果、どちらかの抗体を持っていた患者17人では、65%に当たる11人で治療効果が認められた。一方、持たなかった58人では、効果があったのは11人(19%)にとどまり、抗体の有無が治療効果に影響を及ぼすことが分かった。

 腫瘍が小さくなれば、抗体の量が減少することも確認。抗体量を測定することで薬の効き目を追跡することも可能とした。

 現在の一般的な検査はがん細胞を採取して行うため、岡教授は「血液検査であれば、患者の身体的、経済的な負担は小さくなる。実用化に向けて研究を加速させたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2020年01月19日 更新)

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