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手術件数増加に対応し新棟建設 倉敷成人病センター(倉敷市白楽町)梅川康弘病院長

梅川康弘病院長

倉敷成人病センターは昨年9月、内視鏡手術支援ロボット「ダヴィンチ」を最新型に更新した。ロボットアームをより自由に動かせるようになり、鮮明な画像を見ながら患者の体の負担が軽い低侵襲手術を行っている(倉敷成人病センター提供)

 ―地域を支える医療機関として、がん治療に重点を置いておられますね。

 当院は岡山県のがん診療連携推進病院に認定されています。質の高いがん治療を提供する責任があり、患者さんの多い婦人科、泌尿器科、乳腺外科などでは、国が指定する拠点病院に劣らない設備をそろえ、スタッフも充実しています。

 また昨年、呼吸器外科医師も着任しました。肺がんなど専門領域のがん診療体制の整備も進め、地域の方々の期待に応えたいと思っています。

 ―手術件数も年々増加し、2018年度は6647件、19年度はさらに増えそうだと伺っています。

 手術室のやりくりに苦労している状況です。特に眼科の手術が急増しています。眼球の中で繊細な手技を行う網膜・硝子体手術では、県西部の患者さんの大半を引き受けています。緑内障治療を得意とする医師も赴任し、その手術も多くなっています。周辺の眼科開業医の先生方からの紹介による手術が多いです。

 婦人科がんの手術も多く、13年10月、中四国の民間病院では最初にダヴィンチを使うロボット手術を導入しました。昨年9月に最新機種に更新し、「ロボット支援後腹膜鏡(こうふくまくきょう)下傍大動脈(ぼうだいどうみゃく)リンパ節郭清」という手術を国内で初めて成功させました。海外からも手術を学びたいという医師が研修に訪れています。

 泌尿器科では、がんの治療だけでなく、出産を経験した女性に多い「骨盤臓器脱」など、他の施設があまり扱わない領域も一生懸命取り組んでいます。市民公開講座や電話相談を行い、悩んでいる方が大勢いることが分かりました。泌尿器科の医師は6人おり、今後も力を入れていきます。

 ―新棟の建設工事が進んでいます。どのような目的の建物になりますか。

 6階建ての新棟は眼科と婦人科に多くのスペースを割きます。2階と3階は眼科の「アイセンター」にします。現在すし詰め状態になっている外来を広げ、注射などの処置もゆったりできるようにします。手術室とも直結します。

 手術室は新棟に8室整備し、現在のセンター棟と合わせて計15室になります。新たに放射線治療室もつくります。これまで当院でがんを手術しても、放射線治療が必要な場合、一時的に装置がある他の施設に移っていただかなくてはなりませんでした。完成後は一貫して治療を受けていただくことができます。がん化学療法に詳しいがん専門薬剤師も5人おり、手術件数をさらに増やせると見込んでいます。

 最上階には最大400人収容できるホールを整備します。講演会や市民公開講座などを積極的に開きたいと思います。新棟は年末までに完成し、来年早期に稼働する予定です。

 ―少子化が進むとともに分娩(ぶんべん)受け入れ施設も減り、倉敷成人病センターの担う役割がますます大きくなっています。

 近年の分娩は年間1500件前後で、中国地方ではトップクラスです。周産期センターでは24時間365日、産婦人科医師と「アドバンス助産師」などの資格を持つ助産師が常駐し、安心してお産のできる体制を整えています。

 当院で生まれたお子さんは当院の小児科が診る。大人になれば内科や外科、婦人科が診る。赤ちゃんができたら、また当院で産んでいただく。そのような世代を超えた医療を提供できるよう努力していきます。

 ―地域の開業医と顔の見える関係をつくり、連携を深めていますね。

 普段はかかりつけ医で診てもらい、急性の症状で検査や入院手術が必要な時はこちらで診るという役割分担を目指しています。複数の病気を持つ方も多く、1軒のかかりつけ医だけで難しい場合は、当院の外来で診ていけばいい。

 手術件数とのバランスを考えると、内科の診療体制の充実もさらに図りたいと思います。糖尿病などの合併症を抱えながら手術に臨む患者さんのコントロールも重要です。

 ―グループのコミュニティケアセンター・ライフタウンまび(倉敷市真備町箭田)は2018年7月の西日本豪雨で2階まで浸水し、やっと昨年11月に1階のリニューアルが完了しました。どのように活用していきますか。

 入所については当面、再開が困難な状況です。今後はデイサービス事業を中心に、高齢者だけでなく地域の3世代の人々が集う場として、介護予防にも役立てたいと考えています。

 倉敷芸術科学大学の協力でできた「まちなか研究室 まびデジタル工房」で、ものづくりのリハビリができます。野菜を栽培する畑の一角でポニーやヤギ、ウサギを飼っており、農業セラピーや動物セラピーに親しめます。クッキングスタジオでは親子や高齢者を対象にした料理教室を開催していきます。

 真備町外に避難した方も、こういう施設があれば帰ってきやすくなるだろう―という視点で、復興を後押ししていきたいと思っています。

 うめかわ・やすひろ 津山高校、島根医科大学医学部卒業。同大学附属病院、興生総合病院(三原市)を経て1995年から倉敷成人病センター内科に勤務。内科部長、副院長、倉敷成人病クリニック院長を歴任し、昨年6月から倉敷成人病センター病院長。専門は総合内科、消化器疾患、肝疾患、感染症。日本内科学会認定内科医・総合内科専門医、日本消化器病学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医など。

■倉敷成人病センター

倉敷市白楽町250
086-422―2111
 【診療科】内科(リウマチ含む)、眼科、産科、婦人科、体外受精センター、泌尿器科、外科、小児科、整形外科など18
 【病床数】269床
 【ホームページ】http://www.fkmc.or.jp/
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2020年01月20日 更新)

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