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川崎医科大・尾内一信教授に聞く 新型コロナ、知識と自覚と責任を

川崎医科大の尾内一信教授

 岡山県内で新型コロナウイルス感染症が初めて確認された。パニックを起こさず、正しく感染予防するために、私たちはどうすればいいのか。感染症に詳しい川崎医科大(倉敷市)の尾内一信教授は「一人一人が病気への正しい知識を増やし、自覚と責任を持って感染拡大に備えることが重要」と指摘する。

 ―新型コロナウイルスが県内でも確認された。

 女性はスペインからの帰国者で感染経路が比較的明確なため、過剰な心配は無用だ。県内では重症肺炎患者ら200人以上を検査し感染確認が1例なので、現時点で普段の生活リスクは高くない。ただ、近隣県や海外での感染は急増しており、県内への流入は避けられない。そうしたハイリスク地域の滞在者は微熱でも積極的に検査するべきだろう。

 ―感染が拡大した場合はどうなるのか。

 最も警戒しないとならないのは医療崩壊だ。県内では検査態勢が1日約40件、専用病床数が100床余りのため、感染拡大が進むと重症者へ手が回らなくなる。さらに院内感染があれば病院も機能不全に陥る。市中感染が始まった段階で重症者対策にシフトし、軽症者に自宅で静養してもらうよう態勢づくりを進める必要がある。

 ―イベント自粛や休校が続いている。

 感染症予防の観点から現状の対策は効果があり継続が望ましい。しかし、新型コロナは夏場に終息するような性質ではなく、治療薬が見つかるか、人口の6~8割が感染し免疫が広がるまでは出口が見えない。社会的、経済的影響を考えると、高リスクの密閉空間、密集場所、密接場面を避け、集団感染の発生を抑えるという対策が持続可能で現実的かもしれない。

 ―「正しく怖がる」と聞くが、どうすればいいか。

 まずデマに振り回されず、新型コロナへの知識を積み重ねること。国内での重症化率は約20%、致死率は2%程度。インフルエンザでは毎年約3千人が死亡している。リスクの高い高齢者や免疫力が弱い妊婦、糖尿病患者ら以外は冷静に対応してほしい。一方、社会全体で感染拡大を防ぐ意識も必要だ。手洗い消毒を徹底し、体調が悪いときは職場や学校を休み、せきエチケットを守るなど、一人一人の自覚と責任を持った行動が求められる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2020年03月24日 更新)

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