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認知症にやさしい社会をつくるには こころの市民講座

副院長
石津 秀樹

 慈圭病院(岡山市南区浦安本町)が開いたこころの市民講座の講演要旨を届ける。石津秀樹副院長が「認知症にやさしい社会をつくるには」と題して話した。



わが国の認知症政策

 認知症にはなりたくないと誰もが思います。歳をとると認知症予防が気になるものです。しかし、認知症になりやすい一番の要因は長生きすることです。長寿社会で高齢者が増えれば増えるほど、認知症の人も増えるのです。

 国は認知症施策推進大綱では、認知症になっても希望を持って日常を過ごせる社会を目指し、認知症の人や家族の視点を大切にしながら「共生」と「予防」を両輪として施策を推進することを目標にしました。認知症にならないために予防することと、認知症になった場合に共に生きることの両面から認知症に対応しようとしています。

認知症はじぶんごと

 昔は歳をとれば耄碌(もうろく)したと言われました。今では病院へ行けば、軽度認知障害と言われるかもしれません。認知症は他人ごとではなく自分ごととして認知症の人に接することができれば、認知症の人の周辺症状の悪化を予防できるかもしれません。それには、誰でもが認知症になるという視点が必要なのです。

 認知症診断に使われる長谷川式スケールを作られた長谷川和夫先生は、自分が認知症になったことを告白し、その様子はテレビでも放送されました。「僕はやっと認知症のことがわかった」という本の中で、「認知症になっても見える景色は変わらない」と当事者の感想を述べておられます。そして認知症についての正しい知識を持って、何もわからないと決めつけて置き去りにしないでほしい、また本人抜きで物事を決めず、時間がかかることを理解して暮らしの支えになってほしいと願いを述べられました。

認知症は怖くない

 私達はどんな認知症になるかわかりませんが、認知症になっても周囲の人の理解があり、自分の意思が尊重され、わからないところは笑顔で助けてもらえる社会であれば、安心して認知症になることができます。認知症が怖くない社会を作っておけば、順番に認知症になるのですから問題はありません。予防にこだわらず、笑顔で共に生きることを目指しましょう。

認知症になっても暮らせる町とは
・認知症になった人や家族の混乱や苦悩を理解している人(認知症サポーター)がたくさんいること。
・本人と家族を支援するいろいろなシステムや施設が整っていること。
・意思決定を支援してもらえる地域の見守りがあること。

(慈圭病院「きょうちくとう」はる2020から転載)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2020年04月14日 更新)

タグ: 高齢者慈圭病院

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