文字 

(2)看護師 おおもと病院総看護師長 秋山裕恵

患者の血圧を測定する看護師

 看護師は厚生労働大臣の免許を受けた国家資格です。その仕事は法律で定められ、大きく二つあります。

 一つ目は「診療の補助」。血圧、体温、脈拍、呼吸状態(バイタルサインと呼ばれるもの)の測定、採血、注射、点滴、処置の介助等が当てはまります。二つ目は「療養上の世話」であり、食事・排泄・入浴の介助、褥瘡(じょくそう)予防のための体位変換などが該当し、他にも問診、手術の補助、夜勤の巡回、カルテの記載など多岐にわたります。

 また、患者さんやご家族の精神面でのケアは看護師の重要な役割と言えるでしょうし、今は新型コロナウイルスの感染拡大が深刻な問題になっていますが、感染予防も大事な職務です。

外来、病棟、手術室 

 当院では、約50人の看護師が外来や病棟、手術室で働いています。

 病院の窓口である外来には病気やけが、検査を受ける方などさまざまな患者さんが来られます。短い時間で患者さんの表情や顔色などその時の印象や、いつもと様子が違うといった、ちょっとした変化や異常にいち早く気づくことが大切です。中には来院されてすぐに緊急手術となる事例もあり、緊張が途切れることがありません。

 看護師が24時間勤務する病棟は、治療の場であると同時に患者さんの生活の場でもありますので、看護は多岐にわたります。当院では乳腺・消化器疾患の手術で入院される方が多くいます。日勤や夜勤の勤務交代のたびに患者さんの体調などに関する細かな情報を申し送りし、その情報を頭に入れた上で病室を訪ね、声をかけ、表情なども確認しながらケアをしています。

 手術室では、スムーズに手術が進み、安全に終えることに全力を尽くします。そのためには万全の準備が必要です。患者さんが緊張や不安を最も感じるところでもあり、手術を受ける心の準備を整える役割も果たしています。

“患者ファースト” 

 看護師には日本看護協会が認定する「専門看護師」「認定看護師」もあり、がん看護など特定の分野について、より水準の高い看護を実践しています。

 当院の乳がん看護認定看護師の大久保茂美さんは「私の存在は心配事を聞く窓口です。患者さんとの会話の中から糸口を見つけ、一緒に考えていきたい」と、また、がん看護専門看護師の岡田華恵さんは「外来から入院、退院後と患者さんと関わりを持ち続け、信頼関係を深めていきたい」と言います。

 二人を含め、当院の看護師全員に共通しているのは、患者さんやご家族にとって最適な看護とは何かを追求していくこと、つまり“患者ファースト”の姿勢です。

人間的視点も大切 

 看護とはその字の通り、患者さんを「看(み)て」「護(まも)る」ことです。フローレンス・ナイチンゲール(1820~1910年)は「良い看護というものはあらゆる病気に共通するこまごまとしたこと、そして一人一人の病人に特有のこまごまとしたことを観察すること、ただそれだけによって成り立っている」と述べています。

 病状の小さな異変も見逃さないことが、患者さんの命を救うことにつながりますが、観察には医療的な視点だけでなく人間的な視点も大切です。日頃の会話の中から患者さんの生活の一端を知り、その気持ちや思いをケアに反映させようと努力もしています。

 少しの心遣いで「楽になった」という声は私たちの大きな励みになります。患者さんが回復して退院される時の「ありがとう」の言葉と笑顔は、治療中のつらい時を知っているだけに、深く心に響きます。

 私が30年間、看護師を続けてこられたのは、看護を通して人とは何かを学び、患者さんと喜びを分かち合えたからです。

     ◇

 おおもと病院(086―241―6888)

 あきやま・ひろえ 大安寺高校、川崎医療短期大学卒。川崎医科大学附属病院を経て1990年におおもと病院に入り、2019年から総看護師長。消化器内視鏡技師。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2020年05月18日 更新)

タグ: がんおおもと病院

ページトップへ

ページトップへ