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アルツハイマー低コスト検査開発 阿部岡山大教授ら ペプチド使用

阿部康二教授

 岡山大大学院の阿部康二教授(脳神経内科学)らの研究グループは、血液に含まれる4種類のペプチド(アミノ酸化合物)を使ってアルツハイマー病のリスクを診断できる検査法を開発した。既存の検査に比べて低コストで、体の負担が少ないことなどが特徴。共同研究を行ったバイオベンチャーのプロトセラ(大阪市)が今秋をめどに医療現場で提供を始める予定。

 アルツハイマー病はアミロイドベータ(Aβ)というタンパク質が脳内で蓄積することが原因の一つとされ、発症前の早期診断が求められている。Aβの蓄積量は主に、十数万~数十万円かかる陽電子放射断層撮影装置(PET)検査や背骨の間に針を入れて脳脊髄液を採取する方法で調べられるが、高い費用や患者の身体的な負担が課題となっている。

 阿部教授らは別の手法で同病のリスク因子を調べるため、健常者100人と同病などを発症する前段階「軽度認知障害(MCI)」がある60人、患者99人の血液を採取。プロトセラが持つ独自技術で血清中のペプチドを網羅的に解析すると、MCIの人と患者には4種類のペプチドが特異的に存在していることを突き止めた。

 4種類のペプチド濃度を統計手法で分析すると、認知症のリスクを示す指数が健常者に比べてMCIの人は平均で約1・6倍、患者は約2倍となり、相互に有意差が見られたことなどから新たな検査法として実用化を図った。

 検査は人間ドックや健康診断のオプションとして、同社と取引のある医療機関で受けられる。自由診療で2万円以下の見込みで、受診者は採血だけで済む。結果の通知には1週間程度かかるという。

 阿部教授は「4種類のペプチドが、脳内の炎症や血液凝固に関わるタンパク質の断片であることが分かった。さらに研究を進め、アルツハイマー病の原因解明につなげたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2020年05月23日 更新)

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