文字 

(2)認知症プロジェクト 万成病院看護副部長 石丸信一

築100年以上の古民家で、地域の開業医らを講師に講座を開催

池にコイや金魚が泳ぐ、落ち着いた雰囲気のこだまの杜

石丸信一氏

 認知症施策推進大綱では、認知症の発症を遅らせ、認知症になっても希望を持って日常生活を過ごせる社会を目指し、認知症の人や家族の視点を重視しながら「共生」と「予防」を車の両輪として施策を推進するという基本的考えを示しました。

 当院では2015年から認知症プロジェクトを立ち上げ次の三つを柱として活動しています。

 (1)認知症フルステージへの対応

 入院受け入れ病棟は二つのユニットに分かれており医師、看護、介護、作業療法士、精神保健福祉士などさまざまな職種が連携しながら認知症による行動・心理症状の改善、日常生活援助、退院支援などに関わっています。また、高齢者の場合、認知症だけでなくさまざまな身体合併症があり、身体管理が必要なケースも多く人生の最終段階への対応についても必要なケースがあります。

 (2)古民家活用による空間の提供

 当院のすぐ前に、築100年以上の古民家があり、18年から地域交流の拠点「こだまの杜」としてさまざまな活用をしています。毎月開催している地域交流カフェや認知症カフェのほか、日本庭園を望める落ち着いた雰囲気の中で病院内、地域内の交流を図っています。地域交流カフェでは、これまでの病院スタッフ中心の運営から、地域住民が地域包括ケアシステムに関わって相互に支えあう基盤づくりになるようにと、ボランティアとともに運営していくスタイルに変化しています。

 (3)認知症ネットワーク強化

 認知症プロジェクトでは院内連携はもちろんのこと、地域の認知症の人を支える関係機関との連携も強化しています。認知症の人やご家族、またその支援者とのつながりを大切にし、認知症になっても住み慣れた環境で安心して生活ができるよう支援しています。

 以上が万成病院における認知症への取り組みです。

 ■地域交流カフェを通して診断・治療につながったAさん

 Aさんは地域交流カフェ「こだま」開始当初から地域の方や、病院スタッフとの交流を楽しみに毎月、欠かさず参加されていました。そんなAさんでしたが、服装の乱れや、表情の乏しさなどが目立つようになり、スタッフから包括支援センターへ情報提供を行いました。包括支援センター職員の関わりにより介護認定を受けましたが、サービスを受けることはなく、単身での生活を続けておられました。

 その後毎月の参加が見られなくなり、近隣の友人からも連絡が取れないとスタッフに相談がありました。民生委員や近隣住民からも包括支援センターに相談が寄せられ、診断と今後の生活支援について検討を行うため当院を受診し、アルツハイマー型認知症と診断、介護保険によるさまざまなサービスを早期に導入することにより、現在も支援を受けながら住み慣れた地域で生活をされています。

     ◇

 万成病院(086―252―2261)

 いしまる・しんいち 高校卒業後、1989年に万成病院入り。勤務の傍ら、岡山看護専門学校に学び、94年に卒業。2017年から現職。介護支援専門員、認知症キャラバンメイト。兵庫県出身。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2020年06月16日 更新)

タグ: 精神疾患万成病院

ページトップへ

ページトップへ