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病原性を持つプロセス明らかに 岡大院教授ら 未知ウイルス予測に

垣内力教授

 岡山大大学院の垣内(かいと)力教授(分子生物学)らの研究グループは、大腸菌の遺伝子が変異し、病原性を持つようになるプロセスを実験で明らかにした。遺伝子をコントロールすることで、病原性を抑える薬の開発が期待できるとしている。一連の実験は、現在の新型コロナウイルスのような未知の細菌やウイルスがどのように生まれるのかを予測する手法にも応用できる可能性があるという。

 「病原性」とは病気を引き起こす性質のこと。生命が誕生した当初、細菌には病原性がなく、その後の進化の中で有するように変わったと考えられている。ただ、その過程は実際には検証されておらず、垣内教授らは大腸菌を使った再現実験を行い、病原性のほとんどない菌が病原性を持つようになるまでを調べた。

 人為的に遺伝子変異させた大腸菌をカイコの幼虫に感染させる実験を20回繰り返し、病原性を500倍に強めた後、ゲノム(全遺伝情報)を解析。病原性に関わるとみられる300種類以上の変異の中から、「LPSトランスポーター」というタンパク質の形成に関わる遺伝子の変異が、病原性を10倍以上に高めていることを突き止めた。垣内教授らは、カイコの免疫に対抗するため大腸菌の遺伝子が突然変異したとみている。

 垣内教授は今後、これらの遺伝子群の働きをさらに詳しく調べる方針。「今回の実験手法は、自然界で将来起こるであろう遺伝子の突然変異について事前に予測し、未知の細菌やウイルスへの対処方法を研究しておく観点からも有用と考える」と話している。

 研究成果は4月下旬、米科学誌プロス・パソジェンズで発表した。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2020年06月21日 更新)

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