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インタビュー どうする医師不足(中) 金田道弘金田病院長(真庭市) 県主体で適正な配置を

 かねだ・みちひろ 川崎医大卒。岡山済生会総合病院勤務などをへて父が開業した金田病院へ。1998年より現職。中央社会保険医療協議会DPC評価分科会委員、岡山県保健医療計画策定協議会委員、岡山大医学部臨床教授なども務める。真庭市出身。55歳。

 ―医師の不足と地域偏在が深刻だ。真庭圏域も人口当たりの医師数が、岡山市など岡山県南東部の6割以下しかいない。

 地方の病院経営者にとって医師確保は最重要課題。私も毎月何回も岡山大や川崎医大へ派遣のお願いに行っている。

 金田病院(真庭市西原、177床)の常勤医は4月から外科が1人減り12人になった。派遣元の大学に、代わりの医師を依頼したが、獲得できなかった。脳神経外科も2人のうち1人が家庭の事情でフルタイムから週4日勤務に変わった。

 外科、脳神経外科をはじめ各診療科とも非常勤の医師に来てもらい、何とか補っている。30人余りいる非常勤医が頼みだ。

 ―医師を確保するのに必要なことは。

 「地域にとってなくてはならない病院」が必須条件。だから救急もできる限り応じている。真庭圏域だけでなく、夜間の救急体制が手薄な新見市の救急車にも対応している。救急車の受け入れは十数年間で3倍以上に増え、年900件を超えた。

 昨年12月には、救急など公益性の高い医療を担う「社会医療法人」の認定も岡山県内の病院で初めて受けた。

 公益性を果たすため、かつて競合関係にあった落合病院(真庭市落合垂水)との一層の連携を目指し、経営幹部同士の協議会を4月に始めた。連携すれば効率化できる上、医師も派遣してもらいやすくなると期待している。

 ―だが、派遣元の大学も、2004年にスタートした新しい臨床研修制度で医師が手薄になっている。

 これからの時代にふさわしい医師派遣のシステムをぜひつくってほしい。

 2次医療圏の設定や、医療圏ごとの基準病床数は都道府県が定めている。医師の適正な配置も県が主体となって協議してはどうだろうか。

 ―しかし、都道府県は今、自治医大卒業生を除けば医師の配置に直接は関与できない。

 そのシステムを変え、岡山県、両大学病院、拠点病院などで県医師適正配置推進協議会を立ち上げてはどうか。岡山県は08年6月から1年間、岡山、倉敷、津山市の主な6病院に協力を呼び掛け、医師不足に悩む新見市の病院に医師を派遣した。ああいうシステムも復活してほしい。

 国の医療政策は大病院中心。だが、真庭市のように大病院がない地域では中小病院の役割が大きい。そうした病院に医師を派遣してほしい。

 ―大学医学部の入試で「地域枠」の定員が増えるなど、地域医療の大切さが次第に認識されている。

 岡山大の地域枠1期生が昨年夏、当院へ研修に来てくれた。川崎医大の研修医も交代で地域医療の研修に訪れている。学生や若い医師が地域医療の現場を知るメリットは大きいはずだ。

 若い医師の多くは、都会の、大きい、公的な病院がいいと思いがちだが、地方の中小病院だからこそ身につけられることがある。社会性、人間性や病院のマネジメント、何より「地域」の素晴らしさを学んでほしい。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年05月12日 更新)

タグ: 医療・話題

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