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(6)「杜の茶屋」~古民家で人とつながる 万成病院生活支援相談室精神保健福祉士 吉市遥菜

古民家「こだまの杜」からの景色

吉市遥菜氏

 万成病院では、築100年以上の古民家「こだまの杜(もり)」で、月に1回ずつ二つのカフェを開催しています。病院と地域住民がゆるやかに出会い、お互いに支えあえる地域を目指して2015年より開催している「地域交流カフェ こだま」と、今回ご紹介する「杜の茶屋」です。

 ■杜の茶屋とは

 「杜の茶屋」は、19年6月より、「認知症カフェ 杜の茶屋」としてスタートしました。認知症カフェとは、認知症の人とその家族、支援者や地域住民など、誰もが気軽に参加できる集いの場所です。しかし、「杜の茶屋」は病院が運営しているカフェということで、「何か病気を見つけられてしまうのではないか」、「認知症」という言葉が入ると抵抗感があるとの意見もありました。そこで、「杜の茶屋」では、より気軽に立ち寄りやすい場となるよう「認知症カフェ」という言葉を入れずに、ゆっくりお茶を飲みながら自由に時間を過ごしたり、必要に応じて相談もできる場所としての雰囲気作りを大切にしています。決まったプログラムがないということも特徴の一つです。

 ■参加者の声から

 ・サロンなど比較的元気な高齢者が集まる場には参加しづらいというご夫婦

 古民家でゆっくりとした時間を過ごすことで、「久しぶりに夫の笑顔が見られた」と喜んでいただけました。

 ・「病院に行きたいけど精神科は…」と悩んでいた家族の方

 病院スタッフと会って話をすることで不安が解消され、受診をすることができました。

 ・認知症の当事者を持つ家族同士

 日ごろ話せない家族ならではの悩みや思いを涙ながらに話される場面もありました。帰り際には「家族同士で、同じ気持ちが分かり合える人と話せる場がほしかったのでよかった」との言葉をいただき、支援者では気づきにくい、くみ取れない思いもあることを感じました。

 ■杜の茶屋を通じて

 病院とは異なり、地域で生活している方の思いに触れられる「杜の茶屋」は、運営スタッフとしても多職種で学び合う良い機会になっています。認知症の方は、出かける場所や目的ができることで社会との関わりを持ち、同じ状況の仲間や理解者の存在によって安心感を得ることができます。支える家族にとっても息抜きができ、気持ちにゆとりを持てる場にしたいと思います。

 昨年オープンしたばかりで手さぐりでの運営ですが、加齢により生活しづらくなった人や認知症の人、家族、支援者が気軽に集い自然に交わす会話の中で、相談したり、認知症を理解する場所、地域の中で人とのつながりができる場になればと考えています。参加者一人ひとりが「来てよかった」と思えるカフェを目指し、今後も「杜の茶屋」の運営を続けていきたいです。

     ◇

 万成病院(086―252―2261)

 よしいち・はるな 川崎医療福祉大学医療福祉学科卒業。2015年に万成病院に入職し、生活支援相談室にて勤務。精神保健福祉士、社会福祉士。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2020年09月07日 更新)

タグ: 精神疾患万成病院

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