文字 

(3)糖尿病性腎症の食事療法~腎臓にやさしい食事とは? 岡山大学病院臨床栄養部副部長 長谷川祐子

長谷川祐子氏

 糖尿病の慢性合併症の一つである糖尿病性腎症の進行を抑えるためには、運動療法、薬物療法とともに食事療法が大切です。

 糖尿病性腎症の食事療法は病期によって異なります=。腎症の早期には、食事療法は糖尿病食が基本です。目標体重を目安に必要なエネルギー量(カロリー)をとり、肉の脂身などの飽和脂肪酸や砂糖などの単純糖質を控え、食物繊維を多く含む野菜、海藻、きのこ類を十分にとってバランスの良い食事にします。極端な糖質制限は、タンパク質や脂質のとりすぎにつながり、合併症を進行させる可能性がありますので気をつけましょう。

 高血圧がある場合は1日に食塩6グラム未満を目標にした減塩食にします。成人では1日に食塩を10グラム前後とっていますので、今までの食事より半分から3分の1ほど減らす必要があります。減塩食にするためのポイントは表に示しています。調味料以外にも漬物や練り製品などの加工食品には食塩が多く含まれていますので、商品に表示されている食塩相当量を確認しましょう。

 また麺類を食べるときは汁を残し、みそ汁などの汁物は具だくさんにして汁の量を減らすと良いでしょう。煮干しやかつおだしの旨味(うまみ)、酢などの酸味、ショウガやシソなどの香味野菜や香辛料を使うと薄味でも食べやすくなります。調味料はかけるより、つけて食べると量が少なくて済みますし、調理の際には煮詰め過ぎず、食材の表面に味をつけると少ない調味料でもおいしく食べられます。

 外食する際にも食塩に注意しましょう。減塩食で一番大切なことは薄味に慣れることです。薄味にすると最初は満足感が得られず物足りないかもしれませんが、続けていくと徐々に慣れてきて、食材本来の旨味を感じて食べやすくなります。おいしくないと諦めないで続けてみましょう。しかし、過剰な食塩制限は食欲低下による低栄養を引き起こす可能性もあり注意が必要です。

 腎症が進むと食塩制限に加え、タンパク質をとりすぎないようにする必要があります。また、カリウム制限などをする場合もあります。初期の食事療法は特別なものではありません。健康寿命を延ばす食事でご家族と一緒に食べられます。できるだけ早い段階から食事療法に取り組むことをお勧めします。

 糖尿病性腎症の食事療法は病期によっても異なりますし、個々によっても異なります。医療機関で主治医の指示のもと管理栄養士より栄養指導を受けていただくことが望まれます。

 長年の生活習慣(食習慣)を変えることは大変です。食事療法は無理なく続けることがポイントで、制限ではなく適正な栄養をとるという意識を持つことです。おいしいものが食べられないと思い込まないで、工夫次第で食べられると思いましょう。

     ◇

 岡山大学病院(086―223―7151)

 はせがわ・ゆうこ 岡山県立短期大学卒業。岡山大学病院内、一般財団法人積善会栄養部に入職し給食管理に従事する。2000年に退職した後、岡山大学病院臨床栄養部に入職し栄養指導を中心に栄養管理に従事する。14年に臨床栄養部副部長となり現在に至る。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2020年09月07日 更新)

ページトップへ

ページトップへ