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つらい頭痛の対処法 種類や原因見極め治療を

平野一宏部長

 「頭痛」は誰もが経験したことのある、つらい症状だ。国民の3、4人に1人が悩まされているとも言われる。一口に頭痛と言っても、その症状や原因によっていくつもに分けられる。何も手に付かなくなるような激しい痛みが長時間続いたり、場合によっては命に関わる頭痛もある。岡山中央病院(岡山市北区伊島北町)脳神経外科部長の平野一宏医師に、主要な頭痛の原因や対処法などを聞いた。

 「よく患者さんにお話しするのですが、脳自体には痛みを感じる組織はありません」と平野医師。実は脳を覆っている硬膜や太い血管のほか、頭や首、肩の筋肉などが痛みを発しているという。頭痛にはさまざまな要因が考えられるため、痛みの起こり方、場所、痛みを強くする因子、軽くする因子、生活習慣、ストレスの程度などを詳しく聞き取り、頭痛の種類や原因を見極めて治療方針を立てていると言う。

 頭痛には大きく分けて1次性頭痛(慢性頭痛)と、脳の病気が原因の2次性頭痛がある。慢性頭痛は、さらに緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛の三つに分けられる。予防には食事や睡眠など生活習慣に気を配り、リラックスできる時間を持つことが大切だ。一方、2次性は脳の重い病気が潜んでいる可能性がある危険な頭痛。医療機関の早急な受診が必要となる。

 ■緊張型頭痛 

 慢性頭痛の多くが緊張型。耳の上の側頭筋や首から後頭部にかけての筋肉が凝ると、締め付けられるように痛んでくる。「後ろ頭に重たいものが乗っている」「ヘルメットをいつもかぶっているような感じ」などの訴えが目立つという。

 真面目できちょうめんな性格の人に多く、人間関係や仕事などによるストレスが大きな原因となる。趣味などリラックスできる方法を身に付ければ自然に痛みは解消する。体操やストレッチなどで筋肉をほぐすのも効果的だ。

 「痛みが取れない場合には鎮痛剤や筋肉の力を抜く薬を服用してもらうが、根本的な治療はストレスを減らして筋肉の凝りをなくすこと」

 ■片頭痛 

 突然、頭の片側あるいは両側に、典型的なケースではこめかみにズキン、ズキンと脈打つような痛みがある。多くの人が吐き気を感じておう吐する。倦怠感があり、数時間から2、3日寝込む場合もある。「つらいのは、痛みの激しさを他人には理解してもらえないことだ。職場に出てこないのは怠けているからだ、などと誤解を受ける場合も少なくない」

 特徴は前兆の出現。ピカピカ光るものが見えたり、光の中に黒い部分(閃(せん)輝暗点(きあんてん))があったりする。見えているところが突然欠けたようになることもある。「後頭葉に異常な興奮が起きているためだといわれる。これらが起こると脳の血管が拡張する機能異常が起き、痛みが始まる」

 ストレスが引き金になったり、緊張が解けたタイミングで起こることもある。アルコール飲料やチョコレート、チーズなどは頭痛発作を誘発しやすい物質を含んでいるので避けるべき。

 治療薬はいくつかあるが、トリプタン製剤が代表的。前兆や痛みが出たときに飲む頓服薬で、拡張した血管を収縮させて痛みを和らげてくれる。予防薬としては抗てんかん薬、カルシウム拮抗剤、βブロッカーなどがある。

 ■群発頭痛 

 「耐えられない激しい痛みが片側の目の周りに起こる。1次性頭痛の中で最も強い。火箸やナイフが目の奥に差し込まれるようだと訴える患者さんが多い」

 症状は目の奥のひどい痛みと、おう吐、涙や鼻水など。痛みや触覚など顔の感覚を脳に伝える三叉(さんさ)神経の異常が原因とされる。男性に多く、春先など季節の変わり目に突然、起こるという。発作時にはトリプタン系の注射薬(自己注射も認められている)や点鼻剤を用いる。純酸素の吸入も効果があるとされる。

 ■2次性頭痛 

 代表的なのが「くも膜下出血」だ。脳動脈瘤が破裂すると、途端に激しい頭痛とおう吐、重症になると意識障害が起きる。「頭が痛い」と叫んでその場で亡くなるケースもあるという。「『突然』がキーワード。緊急手術が必要で、急に激しい頭痛が起きたら受診してほしい」

 「脳腫瘍」は進行性の病気。腫瘍が大きくなるとともに頭痛も強くなる。吐き気も出てくる。起床時に強く、おう吐した後に痛みが薄れていく頭痛があれば、脳腫瘍が疑われる。

 「脳動脈解離」は、内膜、中膜、外膜と3層構造になっている血管壁が傷付いて、内膜と中膜、あるいは中膜と外膜の間に血液が流れ込んでしまう。これが刺激になってズキン、ズキンという拍動性の痛みが首から後頭部にかけて起こる。高血圧の人に多いという。

 平野医師は「2次性頭痛はいずれにしても早急な治療が必要。くも膜下出血、脳動脈解離は緊急手術をしなければならない。通常とは違う痛みが突然起こったときは、病院を訪ねてほしい」と話している。

 ひらの・かずひろ 川崎医科大学付属高校、川崎医科大学卒。川崎医科大学付属病院勤務を経て、2014年に岡山中央病院脳神経外科へ赴任。日本脳神経外科学会専門医、日本脳卒中学会専門医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2020年09月21日 更新)

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