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一人で悩まず身近な人に相談を 岡山県精神保健福祉センター・佐藤医師に聞く

「一人で悩みを抱え込まないで」と呼び掛ける佐藤医師

 芸能界で自殺とみられる事例が相次ぎ、後追いが誘発される恐れも指摘されている。新型コロナウイルス禍での生活不安や精神的ストレスからそのリスクは高まっているとされ、岡山県精神保健福祉センターの佐藤俊介医師(精神科)は「一人で悩まず、身近な人に話をしてほしい」と呼び掛ける。

 ―今春以降、女子プロレスラーの木村花さん、俳優の三浦春馬さんや芦名星さんが亡くなり、9月下旬には竹内結子さんが急逝した。

 芸能人にはテレビなどを通して接する機会が多く、身近な人が亡くなった時と同じようなストレスを感じやすい。もともと悩みを抱えている人たちが『あの人でも』という心境に陥り、自殺を選択してしまう恐れもある。実際、外来や電話相談では、芸能人の自殺に関する話題を持ち出す患者も少なくない。

 ―会員制交流サイト(SNS)には芸能人の死の原因などをめぐる真偽不明の書き込みがあふれている。

 SNSの発達により今や誰もが情報の発信者であり、受け手でもある。自殺の原因は複雑かつ複合的なものなので特定は難しく、安易な推測に基づく発信は控えるべきだ。一方、悩みを抱えている人たちには、そうした情報に触れる時間を自主的に制限する工夫も欠かせない。

 ―新型コロナの影響も懸念される。

 全国の約6700人から回答を得た筑波大の全国調査では、コロナ禍のストレスについて「とても感じた」「少し感じた」の回答が合わせて8割に上った。自粛生活や仕事の減少、感染への恐怖、新しい生活様式への適応などがストレスとして現れているのだろう。新型コロナの影響が長期化する中、失業や生活困窮に伴って自殺者が増える恐れもある。

 ―悩みを抱えている人たちはどう対応するべきか。

 コロナ禍で対面でのコミュニケーションは取りづらいだろうが、誰かと話をすることで気持ちが落ち着く。健康的な食事、十分な睡眠を取ることも大事だ。当たり前のことだが、こうしたちょっとした対処法にも効果はある。もし、周囲に悩んでいる人がいれば、まずは話を聞き、対処法をアドバイスしてあげてほしい。

■全国自殺者 7月以降増

 警察庁のまとめによると、2019年の全国の自殺者数は統計を開始した1978年以来、最も少ない2万169人。03年の3万4427人をピークに減少傾向にあり、19年は10年連続の減少となった。

 今年も6月までは前年を下回る人数で推移していたが、7月は前年より25人多い1818人、8月は251人多い1854人(いずれも暫定値、9月は未公表)となっている。岡山県精神保健福祉センターの佐藤医師は「新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあるのではないか」と推察している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2020年10月04日 更新)

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