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(5)チーム力でなし得る「下肢関節疾患に対する人工関節治療」 津山中央病院整形外科部長人工関節センター長 皆川寛

皆川寛氏

 昨今、超高齢化が進む日本の中でも当院の医療圏とする岡山県北地域は、高齢化率34・5%と著しく高く、平均寿命よりも重要視されるべき健康寿命の問題を抱える方が多く住まわれています。

 健康寿命の延びを阻害する要因は関節疾患にあり、その予防および治療スキルの向上は緊迫の課題であります。特に下肢関節疾患においては、疼痛(とうつう)、歩行障害による日常生活動作制限が顕著となり、運動療法、装具療法、薬物療法を組み合わせて治療に取り組んでいきますが、保存療法に抵抗を示す症例や、疼痛が強く日常生活動作制限が著明な症例では人工関節置換術を選択します。

 人工関節置換術とは関節の傷んでいる部分を取り除き、人工の関節に置き換える手術であり、関節の痛みの原因となるものを全て取り除くので除痛効果が大きいのが特徴です。

 当院では人工関節置換術の手術件数は年々増加し、より専門的な治療に対応できるよう人工関節センターを立ち上げました。また、昨今の新型コロナウイルスの流行下においても、病院を挙げてチーム一丸となり、感染拡大防止措置と入院時検査等で厳重な対策をとることにより、安全に手術が行われております。

 私は入念な術前計画をもとに正確な手術を遂行し、術後合併症を長期にわたって発生させないことを目標としております。そのためには術前計画が非常に大切で、術前に3Dで計画を立て=図1、難治例には骨モデル=図2=を作成して手術を進めていき、また術中ナビゲーションを使用することもあります。

 ■リハビリテーションの充実およびその期間の確保

 術後翌日から開始し、休日も含め退院まで途切れることなく専任のスタッフが回復状態や病状に即したリハビリテーションを実施しています。そのため、術後2~3週間の早期退院を目指すことも可能になりますが、ご高齢の方は階段昇降が可能になるまで十分なリハビリテーションを受けて頂いております。

 ■股関節

 術後には特徴的な合併症の脱臼があります。脱臼予防のため、以前には日常生活動作制限を行っていましたが、現在は制限を設けず人工関節設置角度の精度の向上、脱臼のリスク評価を行い、ハイリスク例には脱臼しにくいタイプのインプラントの使用、症例によっては筋・腱(けん)を切離しない最小侵襲手術を選択しております。

 ■膝関節

 関節の損傷が内側にとどまる場合には、関節の一部だけを人工関節へ置き換える人工膝単顆(たんか)置換術を行い、低侵襲化に努めております。

 津山中央病院は、新しい医療設備と先端の医療技術、そして医療スタッフの熱意で県北の医療拠点として日々研さんを積んでまいります。

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 津山中央病院(0868―21―8111)

 みながわ・ひろし 岡山大学医学部卒。岡山大学大学院博士課程修了。同医学部整形外科、津山中央病院、岡山労災病院などを経て、2017年より再び津山中央病院勤務。19年整形外科部長となり、20年より人工関節センター長も兼任。医学博士、日本整形外科学会専門医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2020年10月19日 更新)

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