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(2)肝臓病の内科的治療 最新抗ウイルス療法と内科的肝がん治療 岡山済生会総合病院肝臓病センター長・診療部長(内科) 池田房雄

池田房雄氏

 ■肝臓病の診断と治療

 当院では肝臓内科、肝胆膵(かんたんすい)外科、放射線科や病理診断科などを含めた肝臓病センターとして肝臓病の正確な診断と最善の治療を考え、提供します。

 肝炎・肝硬変の治療はウイルスやアルコール、生活習慣病など病因に対する治療と肝臓の働きを補助する肝庇護(ひご)療法を行います。

 肝がんの特徴は初回治療で治癒できても長期にわたって再発を繰り返すことです。治療は腫瘍の大きさや数、腫瘍の位置などで規定される腫瘍進行度だけでなく、肝硬変かどうかなど肝機能を含めた全身状態も考慮し、外科切除だけでなく超音波下ラジオ波焼灼(しょうしゃく)療法(RFA)やカテーテルによる肝動脈化学塞栓療法(TACE)、薬物療法、放射線療法などさまざまな治療法を組み合わせて行います。

 ■ウイルス肝炎治療

 C型肝炎ウイルスの治療は2014年経口抗ウイルス薬(DAA)の登場で劇的に進歩しました。最近では12歳以上なら肝硬変でも透析患者でも、肝がん治療中でなければ治療対象です。血液検査等でウイルスの専門的な評価を行い、数種類あるDAAから最適な治療薬を選びます。治療期間2~3カ月、副作用はほとんどなく、隔週程度の外来通院で治療可能です。

 当院のDAA治療数は14年から20年まで約6年間で685例。治療評価できた648例のうち628例(96・9%)と非常に多くの方がウイルス消失(ウイルス学的治癒)を得られています。

 また、B型肝炎ウイルスの治療は病状を把握し、治療薬や治療のタイミングをどうするか専門的な判断を要します。治療にはウイルスの増殖を抑える核酸アナログ製剤やインターフェロン注射薬を用いています。

 ■内科的肝がん治療

 内科では超音波下の治療やカテーテル治療、薬物療法を担当しています。超音波下ラジオ波焼灼術は局所制御可能な腫瘍の治療で外科切除ができない場合に用いることが多いです。生理検査技師や臨床工学技士と一緒に治療しています。

 カテーテル治療ではIVRセンターと協力し、がんを栄養する血液を遮断する肝動脈化学塞栓療法を行っています。また、薬物療法は分子標的薬レンバチニブの治療を積極的に行っています。副作用の強い内服薬のため、多職種での治療チームで取り組んでいます。

 20年以降、ラムシルマブ、アテゾリズマブとベバシズマブ併用療法、カボザンチニブが肝がん治療の適応となり、薬物治療の選択肢が増え、これらを効果的に使っていく工夫が必要となっています。

     ◇

 岡山済生会総合病院(086―252―2211)

 いけだ・ふさお 岡山朝日高校、岡山大学医学部卒。米国ペンシルバニア大学留学後、水島中央病院、住友別子病院、福山医療センターを経て岡山大学病院消化器内科。助教、講師として主に肝臓病臨床治験を担当。2019年より現職。肝臓専門医・指導医、岡山大学消化器内科臨床准教授。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2021年02月16日 更新)

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