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手の震え症状改善 新治療法導入 岡山旭東病院、中国地方で初

FUS治療装置の内覧会。多くの医療関係者が集まり、感染対策に配慮しながら説明が行われた=3月20日、岡山旭東病院

 「手が震えて字が書きづらい」「箸がうまく持てない」―。そう言った手足や頭の震え(振戦)で困っている人に対応しようと、岡山旭東病院(岡山市中区倉田)は新しい治療法「FUS」(MRガイド下集束超音波治療)を4月から導入した。本態性振戦とパーキンソン病による日常生活に支障を来すような症状を緩和する治療。外科手術は行わず、体への負担が少ないのが特徴で、中国地方では初めて。

 本態性振戦は原因不明の震えの病気。じっとしているときは震えないのに文字を書こうとしたり、食事をしようとした際、自分の意思とは関係なく小刻みに手や頭が震えてしまう。高齢者に多いが、若い人でも症状が出る。40歳以上で4%、65歳以上で5~14%ともいわれる。一方、パーキンソン病は手足の震えや動作の鈍さなどが主な症状だが、震えは安静時に出る。

 FUSは、震えを生み出している脳深部の視床にある異常回路を特定し、超音波を集束させて組織を壊すことで症状の改善を図る。頭の切開などはせず、入院期間は6~10日。本態性振戦に対して2019年6月、パーキンソン病に対しては20年9月に保険適用になった。

 患者は、頭髪を全てそった上で超音波が出る約千個の端子が付いた治療用ヘルメットをかぶり、磁気共鳴画像装置(MRI)の中に入る。医師はMRIで脳内のターゲットの位置や温度上昇を確認する一方、患者と言葉を交わして震えや副作用の状況を見ながら超音波を正確に脳深部に集中させ、50~60度の熱で対象となる部分を焼く。頭蓋骨の形状によっては十分な治療効果が得られなかったり、頭痛が出ることもあると言う。

 従来、重症の震えに対しては外科手術による治療が主流だった。頭蓋骨に穴を開けて脳の奥に熱凝固針を差し込み、視床の一部を高周波で焼く高周波凝固術(RF)や、脳に電極を埋め込んで電気刺激を与える脳深部刺激療法(DBS)が行われてきた。しかし、命に関わる病気ではないため、手術には抵抗感を持つ人もいた。

 岡山旭東病院は「脳・神経・運動器の総合的専門病院」を目指す中、新たな治療分野を開拓しようとFUS導入を決めた。岡山大学病院(脳神経外科・脳神経内科)、倉敷平成病院と連携して治療に当たる。

 吉岡純二院長は「本態性振戦やパーキンソン病などによる手の震えで生活に支障が出ている患者さんは多い。高齢になるほどその数は増えるが、外科治療は頭蓋骨に穴を開けなければならず、抵抗感のある患者さんも少なくなかった。FUSは体の負担が少ない上、治療効果は大きい。震えに悩む患者さんの期待に応えたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2021年04月19日 更新)

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