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(6)元気で長生きするために~サルコペニアの予防と改善 岡山済生会総合病院リハビリテーションセンター主任 小寺剛志

小寺剛志氏

 これまで肝臓病になると安静が治療の一つであるとされてきました。しかし、最近では過度の安静は運動能力低下、心拍数・血圧調節機能の異常、筋肉の萎縮、社会復帰の遅れ、生活の質の低下などデメリットが多く、死亡率の増加にも関係していることが判明しています。必要以上の安静を避けて適度な運動をすることが、肝臓病の治療にもなり生活機能や生活の質の改善につながります。

 サルコペニアという言葉をご存知でしょうか。サルコペニアとは筋力が低下する病気のことで、加齢やさまざまな疾患によって筋力が低下するものです。

 肝臓は代謝の中枢臓器なので肝硬変などの肝機能障害が生じると筋肉が減り筋力低下が起きやすくなります。高齢者の進行した肝硬変の場合、サルコペニアによって筋肉量の著明な減少が生じやすくなります。大きく筋力が減少すると日々の活動性が低下しやすくなります。筋力低下で運動不足になると骨に適度な圧力をかける機会が減り骨粗鬆症(こつそしょうしょう)になるリスクも高くなります。筋力が低下し、骨粗鬆症になると転倒・骨折の危険も高まります。

 指輪っかテストというサルコペニアの簡単なテストをしてみましょう=図1

 肝機能障害によるサルコペニアの予防と改善には薬物療法と栄養療法、運動療法の組み合わせが重要となります。肝臓病には多くの種類があり、病気の状態も人さまざまです。病気の状態が良ければ自転車や歩行による有酸素運動、負荷をかけた状態での筋力増強運動などを通じて筋力や持久力の向上、骨粗鬆症予防を図ることができます。運動を習慣化することで食事が進み、体力がつき、楽しく運動ができるという好循環を作ることができます。

 日常でできる身近な運動として椅子からの立ち上がり運動があります=図2。自分の体重を用いて筋肉をつけるとともに骨粗鬆症にもよい影響を期待できます。テーブルに手を置いて、息を止めないでゆっくりと立ち、ゆっくりと座る動作を自分の体力に応じて繰り返します。筋力に余裕があればテーブルに手を置かずに行います。

 肝臓病の中でも腹水の貯留や肝性脳症、食道静脈瘤などの症状がある非代償性肝硬変の方は運動を自己判断で行うと体に負担がかかりすぎることがあります。そのような症状で入院された方には、サルコペニアを予防・改善して日常生活や生活の質を低下させないように、多くの職種と連携しながらその患者さんに応じた運動療法を実施しています。

     ◇

 岡山済生会総合病院(086―252―2211)

 こでら・つよし 川崎医療福祉大学卒。2004年から岡山済生会総合病院勤務。理学療法士。3学会合同呼吸療法認定士、認定理学療法士(徒手理学療法)、運動器徒手理学療法認定士。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2021年04月19日 更新)

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