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(9)最新の動向―肝臓病のパラダイムシフト 岡山済生会総合病院副院長臨床研修部長 藤岡真一

藤岡真一氏

 肝臓病は、B型肝炎ウイルス・C型肝炎ウイルスによる感染症や肝臓がん治療から、生活習慣病(非アルコール性脂肪肝炎、アルコール性肝障害)へと大きく変化しています=図1

 肝臓病診断はより低侵襲の診断方法(造影超音波や造影MRIによる肝臓がん診断、超音波による肝硬度測定等)に進化しました。治療もより低侵襲の治療方法(低侵襲内視鏡手術、ラジオ波肝臓がん焼灼(しょうしゃく)術、内服による肝炎ウイルス治療)となっています。その結果、入院の必要な検査や治療が減り、肝臓がん治療の入院期間が短縮され、外来でできる治療が増えています。

 肝臓病は重症で入院を要する深刻な病気とされた時代から、外来で生活習慣病として人生の終わりまで長くフォローしつつ治る時代になりました。実際20年前には、60歳から70歳ぐらいで亡くなっていた肝臓病の方が、現在は同じ病気、病状でも90歳を元気に迎えることができるようになり、外来診療も様変わりしています。患者さんを3カ月から6カ月ごとに診察しながら、かかりつけの先生との連携診療がさらに重要となっています。

 採血結果の数値だけで患者さんのことが分かるはずもなく、検査結果を重視する医師の目では、全人的に患者を診ることはできません。管理栄養士による栄養管理や体組成チェック、薬剤師によるポリファーマシー(多剤服用による副作用)のチェック、事務員や医療ソーシャルワーカーによる経済的支援の検討、理学療法士による身体機能(特にサルコペニア)のチェック、看護師による患者の身体診察や家族背景の理解、介護問題のチェック、臨床検査技師による肝硬度の生理学的測定・採血結果の自動計算―といった、多職種による視点があって初めて全人的に患者を診ることが可能になります=図2

 今回の「肝臓病の治療」シリーズを終えるにあたり、チーム医療こそこれからの時代に求められる医療スタイルであり、岡山済生会総合病院肝臓病センターがその先駆者となれるよう努力を続けることをお約束します。

     ◇

 岡山済生会総合病院(086―252―2211)。連載は今回で終わりです。

 ふじおか・しんいち 岡山大学医学部卒。国立病院四国がんセンター、岡山大学医学部附属病院などを経て2005年、岡山済生会総合病院に入り、19年から副院長、20年から臨床研修部長併任。日本消化器病学会専門医、日本肝臓学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医など。岡山大学消化器・肝臓内科臨床教授。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2021年06月21日 更新)

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