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ドクターカー安定運用を 心臓病センター榊原病院がCF

2005年に導入した「ハート号」。16年間稼働し、今回、更新の時期を迎えた

津島義正外科部長兼救急部長

 心臓病センター榊原病院(岡山市北区中井町)が、新たなドクターカー購入のため5月から資金を募っていたクラウドファンディングは6月末現在1980万円となり、購入に必要な2500万円の8割近くが集まった。医師が同乗するドクターカーは救命率向上や後遺症軽減に力を発揮。同病院は「今後も安全で安定的な運用を続け、地域医療に貢献したい」と話している。

 榊原病院のドクターカーは、心臓血管外科、循環器内科領域の疾患が対象。医療機関からの要請を受けて出動する。1984年に最初の1台を導入。2005年からは車両が点検中だったり、要請が重なったりした場合に備え2台体制をとり、365日24時間運用している。

 20年は320回出動した。内訳は、急性冠症候群(急性心筋梗塞と不安定狭心症)が67件、急性大動脈解離が63件で、この二つが多くを占めている。他に弁膜症、心不全、不整脈、大動脈瘤(りゅう)など。県内が8割、残る2割は香川や愛媛県などの病院の要請で出動した。

 05年に導入した「ハート号」が老朽化。走行距離が16万キロに達し、人工心肺装置ECMO(エクモ)など最新の医療機器を複数搭載した場合に電力不足の懸念があり更新を決めた。コロナ禍で診療報酬が減少し、全額を賄うのは難しいと、クラウドファンディングでの支援を呼び掛けている。

 5月下旬に当初目標の600万円を突破したので新たな目標を購入予定額の2500万円とした。山陽新聞社や中国銀行などが運営するCFサービス「晴れ!フレ!岡山」で16日まで募っている。

 詳細は専用サイトで公開。問い合わせは心臓病センター榊原病院(086―225―7111)。

緊急要する疾患 24時間365日対応
津島義正・外科部長兼救急部長


 心臓病センター榊原病院の津島義正外科部長兼救急部長に、ドクターカーの運用について聞いた。

 ―どのような形で要請を受け、出動するのですか。

 心筋梗塞や大動脈瘤破裂、大動脈解離は一刻を争う病気です。心筋梗塞の心停止は発症1時間以内に起こる確率が高い。初めに診察した医師が心臓、大血管の病気で緊急手術が必要だと判断した場合、当院のドクターカーを要請します。岡山市内なら診療所、県北や県外では地域の基幹病院からの要請が多くを占めています。

 ―治療はどのように。

 ドクターカーで要請元の医療機関に到着した循環器内科医や心臓血管外科医はすぐに診察を始め、その場で緊急手術やカテーテル治療といった具体的な治療方針を立て、当院で待機しているスタッフに伝えます。搬送中の車内でも血圧のコントロール、不整脈を抑える薬の投与をするほか、人工呼吸器が必要な患者さんにも対応します。患者さん本人と家族に病状や手術方法の説明も済ませます。

 ―心血管疾患には高い専門性が要求されます。

 県内で大動脈解離の緊急手術ができるのは当院を含め、岡山大学病院や倉敷中央病院、川崎医科大学付属病院など数えるほどしかありません。当院はそう言った緊急を要する疾患に対し、24時間365日対応できる体制を整えています。

 心筋梗塞などは専門医であっても診断が難しい場合があります。判断が付きかねたとしても、「もしかしたら」と思ったら空振りを恐れず連絡してほしいと思います。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2021年07月05日 更新)

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