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アルコール依存症 治療アプリ開発 県精神科医療センター・宋医師ら

アルコール依存症の治療用アプリのホーム画面と宋さん

 岡山県精神科医療センター(岡山市北区鹿田本町)の非常勤医師宋龍平さん(39)らは、アルコール依存症患者向けの治療用アプリをつくった。体調不良などで内科を受診した患者にスマートフォンで日々の飲酒状況を記録してもらって医師が分析、重症化する前に飲酒行動を変えるようアドバイスする。アルコール依存症患者向けのアプリは全国でも初という。

 アプリは医療ベンチャー「CureApp(キュア・アップ)」(東京)が開発。同社の社員でもある宋さんは、依存症専門医や内科医、心理学者らによる開発チームのリーダーを務めた。

 アプリでは、飲酒した時に酒の種類や量のほか、「自宅」「レストラン」「バー」などの場所、「友人」「家族」「同僚」といったその時の相手を選択して入力する。体調や睡眠状況、気分も5段階評価で毎日、記録する。飲酒が増える傾向を医師が把握するとともに患者にも自覚してもらい、それを回避する行動を助言していく。

 宋さんによると、「飲み会に誘われると断れない」「イライラすると飲みたくなる」など、飲酒のきっかけは人によって異なる。依存症患者は健康悪化などで最初に内科を受診する場合が多いが、大勢の一般患者にも対応する内科では、状況を詳しく聞き取って行動変容を促すのは容易ではなく、アプリにより効率的な分析と治療が期待できるという。

 CureAppでは、5月から岡山市立市民病院と共同で同病院の患者を対象に臨床試験を開始。アプリ使用の有無で20人ずつデータを集めて比較し効果を検証する。医療現場で広く使えるよう、国の薬事承認と保険適用を目指している。

 アルコール依存症が進むと、肝硬変やがんのほか、うつ症状も起きやすい。飲酒運転による事故の危険性もある。宋さんは「依存症が進行すると、なかなか抜け出すのが難しく、人生を台無しにしてしまうこともある。そうなる前にブレーキをかけられるようアプリの実用化と普及を図っていきたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2021年08月09日 更新)

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