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ムコ多糖症II型に新治療薬 岡山医療センター、知能障害改善へ期待

 岡山医療センター(岡山市北区田益)は、ムコ多糖症II型の新たな治療薬「イズカーゴ」の使用を始めた。点滴での投与で脳内に必要な酵素を届けられるという、これまでの薬剤にはない特長がある。知能障害も含めた全身症状の改善が期待されている。

 ムコ多糖症は、先天性の希少難病であるライソゾーム病(小児慢性特定疾病)の一つ。ライソゾームは細胞内の小器官で、不要になった物質を分解する働きがある。分解に必要な代謝酵素がうまく働かないのがライソゾーム病で、足りない酵素の種類によって50種類以上ある。不要な物質が分解されず蓄積すると、さまざまな症状を引き起こす。

 ムコ多糖症II型の症状は、知能障害や低身長、関節のこわばり、骨の変形、おなかの膨らみ、角膜の濁り―など。国内のムコ多糖症患者の中ではII型が一番多く、約250人いるという。治療法には、足りない酵素を補う酵素補充療法や造血幹細胞移植がある。

 イズカーゴは静脈注射による酵素補充療法の薬剤。JCRファーマが5月から販売を始めた。1週間に1回、約3時間点滴で投与する。必要な物質以外は脳に入らないようにしている血液脳関門を、新技術を用いて通過させる。古城真秀子医師は「早い段階で病気を見つけて患者さんに投与できれば、知能障害がほとんど起きなくなる可能性もある」と言う。

 岡山医療センター小児科は、低身長や糖尿病、甲状腺疾患、副腎疾患などの内分泌疾患、ライソゾーム病などの先天性代謝異常症に積極的に取り組んでいる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2021年08月18日 更新)

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