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TAM阻害薬で骨肉腫を抑制 岡山大病院 藤原助教ら実験で確認

藤原智洋助教

 骨のがんと呼ばれる骨肉腫を研究する岡山大病院の藤原智洋助教(骨軟部腫瘍)らのグループは、がん組織内にある「腫瘍随伴マクロファージ(TAM)」の働きを阻害する薬剤を投与すると、骨肉腫の拡大を抑制する効果があることをマウス実験で突き止めた。この薬剤は既に米国で良性腫瘍の治療に使用されており、40年近く効果的な新薬が登場していない骨肉腫の新たな治療法確立が期待できる成果という。グループは2年後の臨床試験着手を目指す。

 藤原助教らによると、国内での骨肉腫の新規発症者は年間約200人。15万人以上の大腸がんなどに比べ、治療法の開発が遅れているという。グループは、近年の研究でヒトの免疫を抑制し、がん細胞の増殖を助ける機能を持つことが分かったTAMに着目。骨肉腫治療への応用を考えた。

 骨肉腫にしたマウス10匹を、薬剤を投与する群(5匹)としない群(同)に分けて実験した。投与群には1週間に1回、体重1キロ当たり10ミリグラムを患部に注射。3週間後、骨肉腫の大きさを比べたところ、投与しない群は平均で約10倍だったが、投与群は3倍程度にとどまっていたという。

 いったん腫瘍が拡大した後、縮小した投与群のマウスの腫瘍内を詳細に分析した結果、がん細胞を攻撃する「キラーT細胞」の数が約2倍に増加。グループは「TAMが減った場所にキラーT細胞が入り込んだ可能性がある」と推測している。

 藤原助教は「薬剤の効果的な投与法などを探り、早期の実用化につなげたい」と話している。

 研究成果は6月、米科学誌に掲載された。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2021年09月01日 更新)

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