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(3)心臓ドックのすすめ 倉敷中央病院循環器内科主任部長 門田一繁

門田一繁氏

 “人は血管とともに老いる”。これはアメリカの有名な内科医の言葉です。人は年をとるとともに、全身の動脈硬化が進行して、血管の狭窄(きょうさく)や閉塞をきたし、さまざまな臓器の障害を引き起こします。多くの血管の中でも、最も重要な一つが心臓の血管、冠動脈で、実際に閉塞すると心筋梗塞を発症し、命に関わる状態にもなります。また、冠動脈が狭くなると、胸痛発作などを起こす狭心症にもなります。

 このような病気の発症を予測することが重要ですが、実際には心筋梗塞の場合は前触れもなく突然発症することが多く、症状からあらかじめ予測して、予防することが難しいのが現状です。しかし、冠動脈の動脈硬化の進展の程度を確認できていれば、その状態に応じて薬物療法などでの適切な対応が可能となります。

 冠動脈では動脈硬化が進むとともに、動脈の壁にカルシウムがたまっていきます。このカルシウムの蓄積の程度(カルシウムスコア)をCTで評価することが可能です。さらに、造影剤や放射線を用いない心臓MRI検査では、直接、冠動脈の動脈硬化の程度を知ることができます。

 このような検査を心臓ドックで行うことで、冠動脈の病気の早期診断が可能となります。図に当院予防医療プラザで行っている石灰化(カルシウム)の評価と心臓MRI検査の実際を示します。

 さらに、動脈硬化は全身の血管で進行するために、冠動脈以外にも、全身の血管の動脈硬化の程度を評価することも重要です。下肢の動脈硬化の程度を上肢と下肢の血圧の比から評価できますし、直接、頸(けい)動脈をエコーで評価することも可能です。また、心臓ドックでは、冠動脈の病気に加え、心電図や心エコー検査から、不整脈や心臓の弁や筋肉の異常も診断可能です。

 最近、高齢化に伴い心不全という病気が増加しています。息が苦しい、むくみがあるなどの心不全症状を認めない場合でも、血液検査(BNPなど)から、心臓に負担がかかった状態を早期に診断することが可能です。実際に、心臓ドックで異常を認めた場合には循環器専門施設を受診していただき、心臓CTや冠動脈造影などのより詳しい検査を行い、必要に応じて、カテーテル治療などの専門的な治療を行っています。

 人間ドックはさまざまな病気の早期診断、早期治療につなげることを目的としていますが、心臓の病気を発症しやすい高血圧や糖尿病、コレステロールの値が高い方、肥満気味の方、喫煙習慣がある方、ストレスの多い方、ご家族に心臓病の方がおられる方などには、心臓ドックを受けられることをぜひお勧めします。



 倉敷中央病院(086―422―0210)

 かどた・かずしげ 愛媛県立八幡浜高、京都大医学部卒、同大学院医学研究科博士課程修了。京都大医学部付属病院を経て1984年倉敷中央病院内科、85年同病院循環器内科、2008年より循環器内科主任部長、18年から同病院副院長も兼務。日本心血管インターベンション治療学会専門医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2021年09月06日 更新)

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