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(1)大きく進歩した多発性骨髄腫の薬物治療 国立病院機構岡山医療センター血液内科臨床研究部長 角南一貴

角南一貴氏

 ■多発性骨髄腫とは

 多発性骨髄腫はリンパ球の一種の形質細胞から発生する血液がんです。詳細を図1に示します。わが国では年間人口10万人あたり約5人が発症し、高齢者に多いがんです。全がんの約1%と多くはありませんが、血液がんの約10%を占め、高齢化に伴い発症率、死亡率とも年々増加傾向です。

 ■多発性骨髄腫に使用される薬剤

 多発性骨髄腫に使用できる主な薬剤を表1に示します。1990年代までは化学療法が主流で、平均生存期間が2~3年といわれていました。しかし、2000年になって、一般診療に大量の抗がん剤と自分の血液の元となる細胞(造血幹細胞)を使った自家移植療法、分子標的薬であるプロテアソーム阻害薬や免疫調節薬が新たに開発・導入され、生存期間が飛躍的に向上し、当科では5~10年くらいまでになりました。最近では、抗体医薬が開発・導入され、生存期間はさらに向上してきております。また、治療薬の開発はめざましく、数十種類の薬剤が開発中です。

 ■当院での多発性骨髄腫の薬物治療の実際

 (1)まだ薬物治療を受けていない方に対して(未治療)

 比較的若く(70歳未満)全身状態がよい方は、積極的に自家移植療法をオススメしております。現状ではもっとも成績がよい治療法です。高齢の方(70歳以上)または全身状態の悪い方には、ダラツムマブ、ボルテゾミブ、レナリドミドおよびデキサメタゾンの中から2~3剤を併用した分子標的治療を行っております。

 (2)過去に薬物治療を受けていて、再発または治療が効かなくなった方に対して(再発・難治性)

 表1に示している、抗体医薬、プロテアソーム阻害薬、免疫調節薬および副腎皮質ステロイドの中から2~3剤を併用した分子標的治療を行っております。特殊な状況下では、新薬の治験をお願いすることがあります。

 ■おわりに

 当科は昭和50年代から多発性骨髄腫の治療に積極的に取り組んでおり、全国的にも有名な施設の一つとして知られております。多発性骨髄腫に対する知識および経験は豊富ですので、お困りの際には、セカンドオピニオン外来でご相談ください。また、当科は岡山県で初めて骨髄移植を行った施設であり、白血病、悪性リンパ腫などの血液がんも数多く診療しております。経験も豊富であり、多発性骨髄腫と同様に高度な医療の提供が可能です。



 国立病院機構岡山医療センター(086―294―9911)

 すなみ・かずたか 倉敷南高校、岡山大学医学部卒。岡山大学病院を経て、1999年に国立岡山病院(現国立病院機構岡山医療センター)入職。2019年から現職。日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本血液学会専門医・指導医。岡山大学医学部臨床教授、医学博士。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2021年09月20日 更新)

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