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(5)大腸CT検査をご存じですか? 倉敷中央病院付属予防医療プラザ部長 岡本裕子

岡本裕子氏

 みなさん、大腸の検査を受けておられますか?

 本邦での大腸がん検診は、便潜血検査を行い、陽性の場合は大腸内視鏡検査での精密検査を受けることが主流となっています。

 大腸がんは早期に発見・治療ができれば予後は良好で、内視鏡治療で完治が可能な場合もあります。ただ、便潜血検査による死亡率減少の効果が示されている一方で、がん死亡数予測(2021年)は肺がんに次いで第2位となり、5万3800人が死亡すると予測されています(国立がん研究センターの統計より)。

 その理由として、早い段階では自覚症状がほとんどないことや、検診受診率が低いこと、便潜血陽性者の精密検査への受診率が低いことが指摘されています。

 また、大腸内視鏡検査はがんやポリープの検出率も良好で精度の高い検査ですが、検査を受けることに不安を感じ敬遠される場合もあります。

 そういった中で、より多くの方に検査を受けてもらう手段として、大腸CT検査が注目されています。

 この検査では、内視鏡のように組織を取ったり治療を行ったりすることはできませんが、CT撮影後にコンピューターで解析することで、腸の中を観察したかのような画像を得ることができ、画像を組み合わせてさまざまな方向から病変の大きさや位置を診断することが可能です=。小さな病変や平坦な病変の診断には限界がありますが、10ミリ以上の病変に対する感度は90%以上と良好です。

 実際の方法としては、まず前日に検査食と大腸CT用バリウムの服用を行います。このタギング(便標識)の方法によって、腸に残った残渣(ざんさ)と病変の違いが分かりやすくなり、服用する下剤の量も200ミリリットルほどと少なくて済みます。

 当日は細いチューブを肛門から数センチ挿入し、炭酸ガスで大腸を膨らませてからCT撮影を行います。検査時間は15分程度で、CTによる放射線の量も通常より低い線量で行います。

 注入した炭酸ガスは空気の100倍以上のスピードで吸収されるため、検査後にはおなかの張りも改善し、すぐに帰宅することが可能です。

 私たちの施設では2020年7月より、人間ドックでの大腸オプション検査としてCT検査を導入致しました。大腸の検査を受けてみたいけれど内視鏡検査には抵抗がある方、過去に便潜血陽性を指摘されたけれどそのまま放置している方など、まずは負担の少ない大腸CT検査を受けてみられてはいかがでしょうか。

 また、人間ドックで便潜血陽性となった場合には、内視鏡検査を優先してお勧めしていますが、内視鏡に抵抗がある方などには、そのまま放置せず、大腸CT検査での精査もお勧めしております。

 自分の健康は自分で守る時代が来ています。せっかくのチャンスを逃すことなく、早期発見・早期治療へつなげる機会の一つとして、大腸CT検査をお役立ていただければ幸いです。

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 倉敷中央病院(086―422―0210)

 おかもと・ゆうこ 高知医科大学を卒業後、岡山大学第一内科へ入局。複数の病院勤務を経て、2017年より倉敷中央病院総合保健管理センター(現在は予防医療プラザ)勤務。日本内科学会認定医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医。医学博士。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2021年10月04日 更新)

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