文字 

(6)ロコモティブシンドローム 倉敷中央病院リハビリテーション部理学療法士 馬井孝徳

馬井孝徳氏

 「ロコモ」という言葉をご存じでしょうか? ロコモティブシンドロームの通称で、運動器(骨・関節・筋肉・神経)の障害で、立ったり歩いたりするための身体能力(移動機能)が低下した状態をいいます。移動機能の低下をいち早く把握し、将来の寝たきり予防を促す目的で日本整形外科学会によって提唱されました。

 自分は日常生活で困ることはないから大丈夫と思う方もおられるかもしれません。しかし、気づかないうちにロコモになっていたり、すでに進行したりしている場合が多くあることが分かっています。当院のロコモ健診の結果では約半数(47・7%)がロコモに該当しています。

 ロコモは三つの段階に分けられ、数字が大きくなるほど重症となります。

 (1)ロコモ度1 移動機能の低下が始まっている状態

 (2)ロコモ度2 移動機能の低下が進行している状態

 (3)ロコモ度3 移動機能の低下が進行し、社会参加に支障をきたしている状態

 ロコモ度判定にはいくつかのテストがあります。その中で、自宅で簡単にできる「立ち上がりテスト」をご紹介します=図1

 (1)40センチの高さの椅子に座る

 (2)両手は交差させて胸につける。

 (3)片足を床から浮かせて、もう片方の膝を軽く曲げた状態で勢いをつけないようゆっくり立ち上がり、片足のまま3秒静止する。

 (4)左右の足で行う

 このテストで立ち上がれない、もしくは片足で3秒静止できない方は、ロコモ度1、移動機能の低下が始まっている可能性があります。

 ロコモにならないためには日頃の運動習慣が重要です。また、ロコモであっても適切な運動を行うことで改善するといわれています。では「運動習慣がある」とはどのような状態をいうのでしょうか。厚生労働省の定義では「1日30分以上の運動を週2回以上、1年以上継続している」ことをいいます。

 今、コロナ禍の影響で外出の機会が減少し、仕事も在宅ワークとなり、自宅にいる時間が増えた方も多いと思います。そこで、お家でできる簡単なロコモを予防するトレーニング「ロコトレ」をご紹介します=図2、3

 ロコトレを行うことで、運動機能が改善する報告があります。ある研究では、ロコモの方は、ロコモでない方と比べて、ウォーキングをしている割合が少ないという報告もあります。1日30分以上の運動を行うには、ロコトレに加えて、歩く頻度を増やしていくことがより重要です。

 現在では、スマートフォンやウェアラブル端末などで1日の歩数を把握することが以前に比べて簡便となっています。脚の筋力を維持するための目標の歩数としては1日7千歩、最低でも4千歩と言われています。急に4千歩以上の活動量を確保しましょうというのは難しいかもしれません。まずは、現在の活動量を歩数で把握して、プラス1千歩を目指してみてはいかがでしょうか。

 倉敷中央病院付属予防医療プラザは、ロコモ検査と理学療法士による個別指導を提供しています。

     ◇

 倉敷中央病院(086―422―0210)

 うまい・たかのり 川崎医療福祉大学卒。2011年に倉敷中央病院入職。理学療法士。ロコモコーディネーター、理学療法士学会認定介護予防推進リーダー、脳卒中認定理学療法士、3学会合同呼吸療法認定士、PHIピラティスインストラクター。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2021年10月18日 更新)

ページトップへ

ページトップへ