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マイナカード保険証運用6.7% 県内施設、制度定着に時間必要か

岡山旭東病院に設置されたマイナンバーカード読み取り機

 約7カ月の延期を経て、10月20日に本格運用が始まったマイナンバーカードを健康保険証として医療機関や薬局で利用できる制度。患者の受付時間の短縮や、病院の事務削減につながる取り組みだが、県内で運用している施設(10月24日時点)は228カ所で全体の6・7%。県内のカード普及率も37・8%(同1日時点)と低く、制度の定着には時間がかかりそうだ。

 岡山旭東病院(岡山市中区倉田)は先行運用期間中の9月中旬、利用を開始。受付などにカードの読み取り機3台を設置した。

 患者が事前登録を済ませたカードを読み取り機にかざすと、病院側が保険資格を確認できる仕組み。専用サイトでは、自身の薬の処方歴や特定健診の結果などを閲覧できる。患者が同意すれば病院もアクセスが可能。二重の検査などを省くことができ、「より良い医療を提供できる」と同病院。だが、10月20日から11月2日までの利用は2人で、先行期間を含めても3人にとどまる。

 県内で運用する施設は病院が18施設(全体の11・3%)、医科・歯科診療所が113施設(4・7%)、薬局97施設(11・8%)と少ない。

 障壁はマイナンバーカードの普及率の低さ。「メリットが感じられない」と、導入をためらう医療機関は少なくない。

 拍車をかけるのが、国が運用する情報確認システムとの接続の煩雑さ。システム改修に専門的な技術が必要な上、関連設備の購入など一定の費用がかかる。岡山市内のある総合病院は準備を進めるが、「新型コロナウイルス禍で多忙。どうしても優先順位が下がってしまう」と漏らす。

 制度の本格運用は3月の予定だったが、健康保険組合によるシステムへのマイナンバー誤入力などのトラブルがあり、10月に延期。3月からは先行運用として行われてきた。

 国は読み取り機を最大3台まで無償提供するほか、導入費の一部を補助するなど、制度の普及に躍起だが、全国約22万9千カ所のうち、運用するのは5・3%(10月24日時点)。目標とする2022年度末での完全導入は難しい情勢だ。厚生労働省は「利便性をアピールし、国民にはカード所持を、施設側にはシステムへの接続を粘り強く呼び掛けたい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2021年11月04日 更新)

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