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B型肝炎苦しみ理解を 岡山大医学部、患者が特別講義

オンライン特別講義でB型肝炎について語る長本さん

 子どもの頃の集団予防接種で注射器が使い回されたため、B型肝炎を発症した長本孝治さん(67)=岡山市=による岡山大医学部保健学科の特別講義が17日、オンラインで行われた。差別を恐れて周囲に病気を打ち明けられなかった長本さんは、同学科の学生約80人を前に「患者のつらさを理解し、寄り添う社会になるように願う」と述べた。

 長本さんは、作業員として働いていた23歳の時に発症。入退院を繰り返す生活を強いられたが、職場の上司に「また入院か」とあきれ顔で言われたことがつらかったという。

 身体への負担が少ない職場に移った後は病気を隠して通院。「役に立たない人間は会社を辞めるべきという風潮に、悩みを相談できる人はいなかった」と苦しかった心情を吐露。「(医療従事者になる)皆さんは患者の苦しみをよく理解し、支えてあげてもらいたい」と呼び掛けた。

 患者やその家族を招き、2019年度から開く特別講義は3回目。この日は、B型肝炎を発症した夫を15年に亡くした女性(56)=同市=も体験談を語った。

 集団予防接種を巡っては、B型肝炎感染者らが、注射器の使い回しを放置したとして国に損害賠償を求めた全国訴訟を契機に、11年に基本合意が成立。県内では今月2日時点で525人の和解が成立している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2021年11月18日 更新)

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