文字 

冬気を付けたい病気とその対策 岡山大学病院皮膚科助教 野村隼人医師

野村隼人医師

11月12日は「いい皮膚の日」

 冬に入って気温が下がり、空気が乾燥すると皮膚のトラブルが増えてくる。日本臨床皮膚科医会は11月12日を「いい皮膚の日」に定め、皮膚についての正しい知識やスキンケアの大切さを知ってもらおうと、1989年から毎年啓発活動に取り組んでいる。今年は岡山大学病院皮膚科助教の野村隼人医師に、これからの季節に気を付けたい皮膚の病気とその対策について話してもらった。

 皮膚は体の一番外側にある人体最大の臓器で、その役割は生体防御に貢献するバリアー機能にあります。ウイルスや細菌の侵入を防いだり、熱や紫外線などの物理的な刺激からも体を守ります。また、皮膚の表面の角層には皮脂膜や細胞間脂質、天然保湿因子があり、これらが水分を逃がさないようにして肌の潤いを保っているのです。

 皮膚のバリアー機能は加齢とともに衰え、肌は乾燥しがちになります。糖尿病や慢性腎臓病の患者さん、抗がん剤や放射線治療を行っている患者さんも皮膚は乾燥しやすくなります。頻回の手洗いやアルコール消毒、長時間の水仕事、お風呂で肌を強くこすったりすると皮膚の乾燥が助長されます。

■皮脂欠乏性湿疹

 これからの季節に増える「皮脂欠乏性湿疹」は、角層の水分含有量が低下して肌が乾燥することから始まります。乾燥した皮膚では、しばしば外部からのさまざまな刺激によりかゆみが生じます。繰り返しかいていると、炎症が引き起こされ湿疹化してきます。湿疹が慢性化すると、皮膚が肥厚して硬くなったり、黒ずんだりします。

 予防法は脱脂や乾燥を助長させない習慣をもつことです。室内では加湿器を使ったり、お風呂では手で優しく洗うのがお勧めです。風呂上がりには保湿クリームを塗ってください。ヘパリン類似物質や尿素配合のクリームがいいでしょう。湿疹が出ていれば治療が必要になるのでお近くの皮膚科を受診しましょう。

■しもやけ

 「しもやけ(凍瘡(とうそう))」は寒い環境に繰り返し暴露されると発症します。手や足先、鼻とか耳などにできやすくなります。外出して寒さに接すると、熱を逃がさないよう血管の動脈、静脈どちらもが収縮します。その後、暖かいところに出ると動脈は開くのですが静脈は縮んだままのことがあります。このため血流が滞ってむくみとなり、炎症が起きてかゆみや痛みが生じるのです。ひどくなると水ぶくれになったりします。

 1日の寒暖差が10度前後の場合に発症しやすくなりますので初冬や初春が要注意です。外出の際は手袋や耳当てなどの防寒具を使用して暖かくするようにしてください。マッサージを行うことも有効です。

■手湿疹

 新型コロナウイルスの感染予防対策で、皆さんは手洗いやアルコール消毒を頻繁にしていると思います。しかし、そのために手が荒れて「手湿疹」になる場合があります。炊事や洗濯など水仕事をよくする主婦の方に多い病気です。

 手湿疹は症状も原因もいろいろです。手のひらや手の甲、指がカサカサして赤みのある腫れや水ぶくれ、ひび割れ、かゆみなどの症状があります。洗剤などで皮膚のバリアー機能が障害されたり、化学物質による刺激、アレルギーによっても生じます。手に洗剤が残っているとそこからかぶれることがあるので、しっかりすすいでください。皮膚科を受診すれば、ステロイドの塗り薬などを処方します。

■スキンケア

 これからの季節はスキンケアがとても大切です。乾燥を避け、クリームなどで保湿を心がけるようにしましょう。手や体を洗うときには強くこすらず優しく洗う、石けんは洗浄力の強いものは使わない、すすぎ残しがないように丁寧に洗い流す、かいても肌が傷付きにくいよう爪は短めに―。この冬を、健康な肌で気持ちよく過ごしてください。

 のむら・はやと 土佐高校、宮崎大学医学部卒。岡山大学病院で初期研修を行い、その後皮膚科に入局。岡山済生会総合病院を経て岡山大学病院に戻り、2020年11月から助教。

オンラインで23日公開講座 日本臨床皮膚科医会 岡山県支部など

 日本臨床皮膚科医会岡山県支部や岡山県皮膚科医会などは「いい皮膚の日」にちなんだ市民公開講座を23日正午から、ビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」を使って開く。

 講座のテーマは「あなたに伝えたい ざんねんなスキンケア! ドライスキンからプチ美白まで」。西川原皮膚科(岡山市中区西川原)の辻和英院長を座長に、北海道・札幌皮膚科クリニックの安部正敏院長が約60分間にわたって講演する。

 無料。事前登録が必要。岡山県皮膚科医会のホームページの「一般市民の皆様」をクリックしてアクセスし、氏名(ハンドルネームも可)とメールアドレスを入力する。登録した情報は他の目的には使用しないという。

 問い合わせは日本臨床皮膚科医会岡山県支部(090―5707―3271)。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2021年11月18日 更新)

タグ: 皮膚岡山大学病院

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ