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(1)チームワークでこどもの健康をささえる 津山中央病院小児科主任部長・周産期副センター長 梶俊策

津山中央病院小児科の医療スタッフ。前列左から小野医師、梶主任部長、杉本医師、北本医師

 津山中央病院は県北の地域小児科センター、地域周産期センターとして24時間体制で小児科診療・新生児診療を行っています。夜間の救急外来診療には近隣の小児科医・家庭医の先生方の協力もあり地域で支えていただいております。

 公認臨床心理士による発達検査やカウンセリング、小児理学療法士・作業療法士による療育も行い、こどもの全身を総合的に診療する一方で、各分野・臓器の疾患ごとに専門的な診療も必要であり、常勤医が専門とする消化器・肝臓、内分泌、腎臓、リウマチ、感染症の分野では、肝生検、腎生検、関節エコー、負荷試験などの検査を行っています。

 また小児循環器、神経、血液などの分野は大学病院から専門医に定期的に来ていただいており、県北にても幅広い分野の専門的診療を受けることが可能な体制をとっています。これにより複雑心奇形や小児がん、難治性てんかんなど高度な診療が必要なお子さんは大学病院での治療へ円滑に移行できています。

 近年最も革新を遂げている治療の一つが生物学的製剤による治療です。いままでは免疫療法の主体は副腎皮質ステロイドホルモンでしたが、長期投与による副作用に苦しんだり、効果が乏しい小児リウマチ患児では関節拘縮(こうしゅく)に至る例もありました。

 生物学的製剤は新しい作用機序で直接、暴走しているサイトカインなどの免疫システムに働き、めざましい治療効果を上げています。特にリウマチ・膠原病(こうげんびょう)・腎臓病の分野では小児適応のある多くの生物学的製剤が導入されています。

 当科では、この分野を専門とする北本晃一医師があいち小児保健医療総合センター感染免疫科と鳥取大学付属病院で小児リウマチ・膠原病、腎臓病診療の研さんと経験を積んだ後、本年4月より部長として着任しました。化学療法センターの協力を得て、トシリズマブの外来点滴加療や、アダリムマブ、ベリムマブの在宅療法の導入などを開始しています。

 内分泌の分野でも杉本守治医師により低リン血症性くる病に対しブロスマブ投与を、血液疾患の分野でも血友病Aに対し奥野啓介医師によりエミシズマブの投与を開始しています。血友病Aでは第8因子製剤を週に2~3回静脈注射することが必要でしたが、第8因子の代わりに第9・第10因子を連結させる作用をもつエミシズマブにより、2週に1回の皮下注射で、より安定した凝固能を維持できるようになっています。

 感染症の分野は、感染症制御ドクター(ICD)の小野将太医師を中心に小児の新型コロナ対応を行っています。インフルエンザやRSウイルスが昨年は流行しませんでした。新型コロナに対するマスクや手洗い、3密回避などの予防策の効果と思われます。

 しかし、いつもあった流行がないと、免疫の無い人(感受性者)が増えてしまいます。乳幼児ではこの夏にRSウイルスが大流行し、例年の冬以上の感染者がでました。季節はずれの出来事に小児病棟は大わらわでした。インフルエンザも同様の心配があります。冬に向けて忘れずにインフルエンザワクチンを受けてください。

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 津山中央病院(0868―21―8111)

 かじ・しゅんさく 鳥取大学医学部卒。同大学院博士課程修了。赤穂中央病院、鳥取大学病院小児科などを経て1996年より津山中央病院勤務。日本小児科学会専門医・指導医・代議員、日本小児栄養消化器肝臓学会認定医・代議員。鳥取大学医学部臨床教授、岡山大学医学部臨床教授。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2021年11月18日 更新)

タグ: 子供津山中央病院

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