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緊急避妊薬 薬局診療で服用可能 県内10市町で取り組み広がる

アフターピル服用の同意書を手にする薬剤師と実際の薬剤

 薬局で医師のオンライン診療を受け、その場で「緊急避妊薬(アフターピル)」が服用できる取り組みが岡山県内で広がっており、これまでに岡山、倉敷市など10市町の22薬局が参加している。欧米などでは処方箋がなくても薬局で購入できるが、国内ではまだ検討段階。薬は性交後72時間以内の服用が必要なだけに、今回の取り組みは望まぬ妊娠のリスクから女性を守るという目的に向けて一歩前進した形だ。

 ウィメンズクリニック・かみむら(岡山市北区本町)を営む産婦人科医の上村茂仁院長らの呼び掛けで「おかやまアフターピルプロジェクト」として10月にスタート。岡山、倉敷市のほか、津山、玉野、総社、新見、備前、美作市と矢掛、勝央町にある薬局が参加している。

 オンライン診療は上村院長と、岡山市内の産婦人科医1人が担当しており、いずれの薬局も予約は不要。健康保険証がなくても本人確認ができれば、14歳以上なら親の同意は必要なく、費用は9500円。多いときには1日5人がこの方法で服用しているという。

 あかり薬局中納言店(同市中区中納言)も参加する薬局の一つ。パソコンが置かれた個室でオンライン診療を受けた後、薬剤師から副作用などの説明を聞き、薬を1錠飲む。

 アフターピルは服用するタイミングが早いほど効果があるとされるが、医療機関を直接受診する必要があった。一方、国は昨年4月、オンライン診療の規制を緩和。今回の取り組みの後押しにつながったという。

 上村院長らによると、新型コロナウイルス禍で身近にいる交際相手と過ごす時間が長くなり、安易に性交に及ぶ10代女性が増加。「恥ずかしい」「親にばれたくない」といった理由から受診をためらう人は少なくないという。「中絶手術は体への負担が大きい。その前に何とか食い止めたい」とする。

 地域によっては、近くにアフターピルを扱う病院がないという課題の解決にもつながるプロジェクト。上村院長は「参加する薬局を増やし、地域間格差をなくすとともに、処方箋なしの薬局販売が実現するよう国などに働きかけたい」と話す。

 取り組みに参加する薬局は、同プロジェクトのホームページ(https://okayama-afterpill.com/pharmacy/)から確認できる。

 緊急避妊薬 性交直後の服用で妊娠を防ぐ薬で、避妊が十分でなかった場合などに使う。性交後72時間以内に飲めば妊娠阻止率は84%とされている。世界保健機関(WHO)は「全ての女性が安全に使用できる」として必須医薬品に指定。欧米やアジアなどの約90カ国では、処方箋なしで薬局で買うことができる。国内では性犯罪の被害者や若者の支援団体が処方箋なしでの販売を長年にわたり要望。国の検討会議で専門家が適切な実施方法などを議論している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2021年12月03日 更新)

タグ: 女性

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