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(2)COVID―19パンデミックにおける地域での役割分担 津山中央病院総合内科・感染症内科部長 藤田浩二

藤田浩二氏

 2019年より始まったCOVID―19は約2年が経過しましたが、世界全体を見渡すとまだ終息の気配はありません。日本国内の発生状況に関しては、デルタ株による第5波は夏に猛威を振るったものの現在は少し感染状況が落ち着いています。ただ、感染はくすぶった形で継続しており、冬に第6波が発生しないことを願う段階にあります。

 これまでのデータを見る限り、パンデミックの初期も現在も重症化する人の割合や死亡する人の割合は年齢によって異なり、高齢者は高く若者は低い傾向が続いていますが、ワクチンや治療薬の登場によって、重症化する割合や死亡する割合は以前よりも低下してきています。

 2020年6月以降は、重症化する人の割合は約1・6%(50歳代以下0・3%、60歳代以上8・5%)、致死率は約1・0%(50歳代以下0・06%、60歳代以上5・7%)となっています。

 パンデミック初期は大混乱が起きていましたが、現在は治療や予防の選択肢が増えたことに加え、みんなで役割分担をして少しでも医療提供が滞らないように多くの工夫がなされています。これらの重症度に応じた治療内容をまとめると図のようになります。

 当院のように集中治療が提供できる拠点病院では、流行が収まっている時期には軽症から重症まで全ての治療を提供することができますが、パンデミック期においてはより症状の重い患者様へ重点的に医療を提供する必要があり、主に中等症IIと重症の患者様を担当させていただくことになります。

 ただし、パンデミックの第5波を思い出していただければ分かりやすいと思いますが、実際には症状の重い方より、軽症、中等症Iの方がはるかに多いため、拠点病院だけでは全く対応できません。全ての患者様に適切な治療を提供するため、拠点病院以外の場所で、多くの軽症の方が待機できる宿泊療養所が運営され、軽症・中等症を引き受けていただく多くの医療機関が存在しています。

 さらに、県庁、保健所等の行政機関によって多くの患者様の体調管理がなされているのみならず、パンデミック期には現場の多くのデータ分析がなされ、タイムリーに医療体制の調整がなされています。

 また、県内の各エリアで病床が逼迫(ひっぱく)すれば圏域を越えて各エリアで協力しあって患者様を受け入れたりもしてきました。他にも、消防、救急、教育機関、各地域の企業も含めて数え上げ切れないほどの方々のサポートも加わり、より強固な協力体制と分業によってパンデミックと向き合う体制が構築されています。

 まだ、完全終息とは至っていないこのCOVID―19に対して、今後もOne teamで立ち向かって行きたいと思っています。

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 津山中央病院(0868―21―8111)

 ふじた・こうじ 京都薬科大学薬学部薬学科卒業・薬剤師免許取得、岡山大学医学部医学科卒業・医師免許取得。亀田総合病院総合内科および感染症内科を経て、2017年より津山中央病院総合内科・感染症内科。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2021年12月06日 更新)

タグ: 津山中央病院

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