文字 

(2)大腿骨近位部骨折の治療について 岡山西大寺病院整形外科医長 大塚亮介

大塚亮介氏

 高齢になると、若いころに比べて骨がもろくなり(骨粗鬆症(こつそしょうしょう))、転倒などの比較的軽い外力によって骨折を生じることがあります。そのような骨折を脆弱(ぜいじゃく)性骨折といい、超高齢化社会といわれる昨今の日本において大きな問題となっています。その中でも頻度が高く、歩行障害など大きな機能障害により、要介護や寝たきりの原因となってしまうものが、大腿骨(だいたいこつ)近位部骨折です。

 大腿骨近位部骨折は太ももの付け根、股関節周辺の骨折であり、骨折の部位によって大腿骨頸部(けいぶ)骨折と転子部骨折に分けられます。

 ギプスや安静などの保存治療では治癒が困難であり、歩行はもちろん痛みのためベッドから起きることも難しくなるため、寝たきりなどの原因となってしまいます。そのため、機能予後はもちろん生命予後の観点からも早期手術を行うことが望ましいと考えられており、当院でも積極的に手術治療を行っています。

 骨折形態によって骨接合術(転子部骨折・頸部骨折)または大腿骨頭挿入術(頸部骨折)を選択し、原則術翌日から全体重をかけてのリハビリテーションを開始します。

 当院で治療を行った本骨折患者さんの特徴として、全国の平均と比較してもご高齢の患者さんが多く、90歳以上の方も多くおられました。

 可能な限り早期手術、早期リハビリテーション開始を目指して治療を行っていますが、特に高齢の患者さんでは受傷前と比較して、どうしても生活レベルの低下が起こることも多いのが現状です。

 そのため重要なのはいかに骨折を起こさないかであり、骨粗鬆治療薬を用いた骨粗鬆治療や、運動療法などが大切と考えられています。

 骨粗鬆治療も整形外科外来で積極的に行っていますので、ぜひ一度ご相談ください。

     ◇

 岡山西大寺病院(086―943―2211)

 おおつか・りょうすけ 高知大学医学部卒業。岡山済生会総合病院、森近病院、笠岡市立市民病院、岡山市立市民病院などを経て、2020年4月より現職。日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2021年12月20日 更新)

ページトップへ

ページトップへ