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(3)心電図の画像伝送 津山中央病院救命救急センター長 前山博輝

前山博輝氏

 急性心筋梗塞は非常に重篤な疾患であり命を落とすこともまれではありません。いち早く診断・治療を行うことが非常に大切です。

 津山中央病院(以下当院)は県北で唯一心臓カテーテル検査、治療を行える施設であり循環器科と協力しながら24時間365日急性心筋梗塞の患者さんを受け入れております。また重度の心筋梗塞の場合は人工心臓(ECMO)も使用し治療にあたっています。

 通常、急性心筋梗塞を疑えば救急隊が当院へ搬送を開始、患者さんが到着し医師が診察、心電図や超音波などの検査を行い、診断をつけます。その後カテーテル室の準備を行い治療に当たります。

 一番難しいところは、救急隊の情報だけで急性心筋梗塞を確定診断できないことです。救急隊も病院前活動のプロですから、しっかりと患者さんの話を聞き身体所見をとり心筋梗塞を疑うわけです。しかし胸が痛い、息苦しいという症状だけでは他の疾患の可能性もあり、やはり搬送されてきてからの診察・検査で確定という流れになります。

 県北の面積は非常に大きく(大阪府の約1・5倍)、救急要請から病院到着まで1時間を越える症例も珍しくありません。病院に到着してそこから診断をつけて準備をして…とすると治療までの時間が非常に長くなってしまいます。

 ここで心電図の伝送システムが生きてきます=図。救急隊が行った心電図の結果を病院へ伝送、タブレットで受信し心電図を見ることができます=写真。医師は患者さんが病院に到着する前に急性心筋梗塞の診断を行えるわけです。診断がつけばカテーテル室の準備もできる、結果患者さんが到着した際にはすぐにカテーテル室へ搬入し治療を始められることとなります。

 このシステムは県北の3消防(津山圏域消防組合、美作消防、真庭消防)と兵庫県の佐用消防に導入しており、2020年12月にシステム導入してからカテーテルまでの治療開始が明らかに早くなっています。治療開始できる時間は都市部と遜色がなく、地域格差を解消できていると考えています。

 このようなシステムは医療過疎である地域でこそ活用できるものと考えております。今後も当院の県北救急医療での役割をしっかりと果たし、地域住民の方々にとって安心安全な地域であるよう、さらなるシステムの改善構築を行ってまいります。

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 津山中央病院(0868―21―8111)

 まえやま・ひろき 岡山大学医学部卒業。ドクターヘリ日本一出動を誇る公立豊岡病院(兵庫県豊岡市)で約8年の修練を積み、2020年4月より現職。SDGs採用や救急システム構築など県北救急医療の充実に向けて奮闘中。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2021年12月20日 更新)

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