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ロボットで胃がん手術 福山市民病院 備後圏域初の導入

福山市民病院で始まったダビンチによる胃がん手術(市民病院提供)

 福山市民病院で手術支援ロボット「ダビンチ」を使った胃がん手術が始まった。これまで岡山県西部の笠岡、井原市を含めた備後圏域は、ダビンチによる胃がん手術を実施できる医療機関がない“空白地帯”だったが、今後は市民病院で年間20例ほど、術後の回復が早いロボット手術を受けられる。

 国立病院機構・四国がんセンター(松山市)で、ダビンチによる胃がん手術を手掛けた香川哲也・外科長(40)が10月、福山市民病院に着任。ロボット手術の第1例目は今月10日、早期胃がんを患った50代男性に行った。おなかに開けた1センチに満たない4カ所の小さな穴に、電気メスや内視鏡を先端に取り付けたロボットアーム4本を差し込み、胃の3分の2を切除した。

 香川科長が操縦席に座って、毛細血管など細部まで観察できる高精細な3D画像を見ながらコントローラーを操ると、ロボットアームが手の動きを忠実に再現。胃に接する膵臓(すいぞう)を傷つけないように、がん細胞が転移する可能性がある胃の周囲のリンパ節を切除するなど約4時間で終えた。出血量も少なかった。

 術後に起こる主な合併症として、リンパ節の切除時に膵臓が傷つき消化液の膵液が漏れ、周囲の臓器や血管を溶かして大出血に至ることがある。男性の経過は良好で合併症もなく8日後に退院した。

 香川科長は、早期がんの治療法であるロボット手術と腹腔(ふくくう)鏡手術は、開腹手術より傷が小さく患者の回復が早い共通点があるが、「ロボットの方が繊細で正確。合併症も少ない」と強調する。

 市民病院によると、ダビンチを使った胃がん手術ができる広島、岡山県の医療機関は大学病院などがある広島、岡山市のほか倉敷市にしかなく備後圏域になかった。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2021年12月25日 更新)

タグ: がん

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