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(4)骨折を防ぐために 岡山西大寺病院整形外科医長 町田芙美

町田芙美氏

 骨粗しょう症は骨密度が低下することで、骨折を引き起こしやすくなります。男性よりも女性に多く、年齢を重ねるほど骨密度は低下していきます。

 骨粗しょう症の危険因子として、年齢、性、身長体重、両親の大腿骨(だいたいこつ)近位部骨折歴、現在の喫煙、ステロイド薬の使用、続発性骨粗しょう症の有無、アルコール多量摂取、などがあります。

 日本骨代謝学会の診断基準では背骨や大腿近位部に脆弱(ぜいじゃく)性骨折があれば骨粗しょう症と診断します。また、骨折がない場合でも、骨密度が若年成人の70%未満だと治療を開始します。

 2021年12月20日の回で当院の大塚医師も書いておりますが、骨折を起こすとQOL(生活の質)の低下を引き起こし、寝たきりになる方もおられます。また、一度骨折を起こすとほかの部位の骨折も起こすことが多いといわれています。

 骨折を起こさないためには、骨に荷重をかけることで骨を強くする歩行などの運動、転倒しないようにする筋力やバランスを鍛える運動を行いましょう。

 また、骨を強くするにはカルシウムだけでなく、ビタミンD、ビタミンK、タンパク質なども重要です。バランスの良い食事を心がけましょう。カルシウムの吸収や骨の沈着を促すビタミンDは、日光により皮膚で合成されるので屋外での活動もお勧めします。

 高齢者の骨折の多くは屋外より屋内で転倒することで起こります。床にものを置かない、もったいないと思わずに足元や廊下に照明をつけておくなどの住宅環境の整備にも骨折の予防としてできることがあります。

 骨密度の測定は複数の方法がありますが、最も信頼性が高いとされているのが「DEX(デキサ、二重エネルギーX線吸収測定法)」です。放射線の被ばく量が少なく、短時間で検査も終了します。ちなみに当院では予約不要で検査できます。診断に必要な骨密度測定法が普及し、この10年の間にも新しい治療薬がでています。

 骨は皮膚と同じように新陳代謝が行われており、古い骨は壊され新しい骨ができています。そのバランスが崩れると骨密度が低下し骨折しやすくなります。骨粗しょう症の治療薬は、血液検査にてそのバランスがどのように崩れているかを検査して、骨の吸収を抑える薬か形成を促す薬か、バランスを整える薬かを選択します。

 コロナの影響で外出することが減り運動量も少なくなったという方が多く外来にもいらっしゃいます。そのような方は、一度病院で骨密度検査を受けてみましょう。骨折によるQOLの低下を防ぐために、普段の生活を心がけ、足りない部分は病院での治療を開始しましょう。

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 岡山西大寺病院(086―943―2211)

 まちだ・ふみ 関西医科大学医学部卒業。岡山市民病院、竜操整形外科病院、岡山赤十字病院、岡山労災病院などを経て2021年4月より現職。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年02月07日 更新)

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