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(5)夜間頻尿 岡山中央病院泌尿器科部長 橋本英昭

橋本英昭氏

 夜間頻尿とは 医学的には「夜間、排尿のために1回以上起きなければならない状態」と定義されています。しかし、臨床上は2回以上で、本人や家族が生活に支障を感じている場合が治療対象になります。特に高齢者の場合は床に就く時間が早く、回数が必然的に増える可能性もあります。

 原因 (1)1回に出る尿量が少ない(膀胱(ぼうこう)容量の減少)(2)夜間の尿量が多い(夜間多尿)(3)眠りが浅い(睡眠障害)の三つに大別されます。もちろん、これらの原因が複雑に重なりあうこともあります。原因を調べるときに参考になるのが、排尿日誌です。朝起きてから翌日の朝まで、排尿した時刻と、目盛り付きコップなどで測定した排尿量を日記のように記録していただきます。

 (1)膀胱容量の減少 たびたび尿意がありトイレに行かなければならないが、行ってもそんなに尿が出ないという純粋な意味での頻尿です。昼間も頻尿になることが多く、排尿日誌で1回の排尿量100ミリリットル程度が目安となります。過活動膀胱、前立腺肥大症、間質性膀胱炎、骨盤臓器脱などの疾患があり薬剤や手術が有効です。

 (2)夜間多尿 夜間頻尿の原因の中で最も多く、65歳以上の方では、24時間の尿量に対する夜間尿量の割合が33%を超える場合は夜間多尿と考えられます。

 治療は生活習慣の改善が第一です。水分をとると血液がサラサラになり、脳梗塞や心筋梗塞が予防できると信じて寝る前にたくさんの水分をとられる方がいらっしゃいますが、科学的根拠はなく、水分のとりすぎで頻尿になっている場合は、むしろ水分を控えることが必要です。適切な1日の飲水量は、体重の2~2・5%と言われており、体重50キロの方では千ミリリットル程度です。

 日中にあまり体を動かさない人は下肢に水分がたまり、夜間に横になることで心臓へ戻る水分が増加し、尿量が増えると考えられています。昼間のうちに脚の下にクッションをあて、足を上げて短時間の昼寝をすると日中のうちに水分の排出を促すことができます。夕方の散歩などの運動は昼間に貯留した水分を筋肉のポンプ作用で血管内に戻し、汗として体外に排出する作用もあるため有効とされています。

 また、加齢に伴い、尿を濃くして量を減らす抗利尿ホルモンの夜間の分泌が低下し、夜間多尿となることもあります。最近では夜間尿量をおさえるデスモプレシンという薬剤が使われるようになりましたが、副作用もありますのでかかりつけ医での管理が大切です。

 高血圧や糖尿病などが夜間多尿の原因となっていることも多く、すでに疾患をお持ちの方は適切にコントロールされているか確認していただくことも必要です。

 (3)睡眠障害 ぐっすり眠れた日は夜間トイレに起きないという方は睡眠障害が原因かもしれません。眠りが浅いために頻回に目が覚めてしまい、目覚めると尿が出そうな感じがしてトイレに行くという状態で、睡眠障害の専門家へのご相談をお勧めします。

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 岡山中央病院(086―252―3221)。連載は今回で終わりです。

 はしもと・ひであき 岡山大学医学部卒。国立岩国病院、広島市民病院、岡山大学医学部附属病院、川崎病院などを経て2007年から岡山中央病院勤務。12年から現職。日本泌尿器科学会専門医、日本泌尿器科学会指導医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年02月07日 更新)

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