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光を照射 がん細胞死滅技術開発 岡山大教授ら、新治療法へ可能性

須藤雄気教授

 岡山大の須藤雄気教授(生物物理学)らのグループは17日、光に反応する単細胞生物のタンパク質を活用し、狙った細胞だけを死滅させる技術を開発したと発表した。周囲の正常な細胞を損傷させず、副作用が生じない新たながん治療法の確立につながる成果という。同日付の米化学会誌電子版に掲載された。

 ヒトの体内ではがん細胞が一定数発生してしまうが、プログラム化された「自死(アポトーシス)」が起こり、その増殖を防ぐ仕組みがある。自死には「細胞のアルカリ化」が大きく関与。グループは、光を感じると、細胞内にある水素イオンを細胞の外へ運んでアルカリ化させる単細胞生物のタンパク質「アーキロドプシン3(AR3)」に着目した。

 実験には、米国の塩湖にいる単細胞生物が持ち、人体には悪影響を及ぼさないとみられるAR3を使用。ヒトの肺がん由来細胞にAR3を投与した後、波長545ナノメートル(ナノは10億分の1)の緑色をした光を約3時間照射すると、ほぼ全てで自死が起きた。

 線虫の実験では、感覚神経にAR3が作られるように遺伝子を操作した。同じ光を24時間当てると、感覚神経の応答反応が著しく低下。他の組織に変化がなかったことから、グループは感覚神経だけが死滅したと推定している。

 グループは今後、別のがん細胞で効果を検証する方針。須藤教授は「最適なAR3の導入量や、体内のがんに届きやすい光の種類なども探り、5年以内に臨床試験に着手したい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年02月17日 更新)

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