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(1)心不全について 倉敷中央病院副院長 門田一繁(循環器内科主任部長)

門田一繁氏

 心臓の病気には、さまざまなものがありますが、社会の高齢化に伴い心不全患者さんが増えてきています。実際に身近な方で、心不全で入院されたとか、心不全で薬を飲んでおられるとか、耳にされる機会が多くなっているのではないかと思います。

 実際に、当院における心不全の患者数も増加してきています=グラフ。そのような中で、日本循環器学会から、一般の方向けに「心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です」との定義が発表されています。この心不全患者さんの症状を良くし、寿命を長くするためには早期に診断し、適切な治療を行い、長期にわたり、さまざまな取り組みを行っていくことが重要です。

 心不全の診療ではその原因を明らかにすることが重要で、そのために、心電図や心エコー検査、心臓MRI、心臓CTなどでの検査を行い、場合によっては、心臓カテーテル検査で、心臓の血管(冠動脈)の評価を行う場合もあります。

 一方、心不全の症状として、むくみや息苦しさなどが重要ですが、このような典型的な症状を認めなくても、血液検査(BNPやNTproBNP)を行うことで、心不全の早期診断が可能な場合があります。

 心不全の原因となる疾患にはさまざまなものがあります。心臓の弁の病気である心臓弁膜症では、外科手術に加え、最近では患者さんの負担が少ないカテーテルでの治療も積極的に行っています。

 実際の治療には大動脈弁狭窄(きょうさく)に対するTAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)や僧帽弁閉鎖不全症に対するMitraClip(経皮的僧帽弁接合不全修復術)があります。心房細動などの不整脈も心不全の原因となり、カテーテルでの治療(カテーテルアブレーション)も有用です。

 また、冠動脈が閉塞すると心筋梗塞を起こし、心不全をきたす場合がありますが、緊急のカテーテル治療(冠動脈インターベンション)で、血流を再開通させることで、壊死(えし)する心臓の筋肉を減らし、心不全を予防しています。重症の心筋梗塞では心臓の働きを補助する装置が必要ですが、現在、心臓の働きを強力に補助できるポンプ(インペラ)=図1=が使用可能になっています。

 これらの心不全の原因治療に加え、薬物療法や運動療法や食事療法などを含む心臓リハビリテーション=図2=が心不全治療の基本です。薬物療法では従来の心不全の基本治療薬に加え、新しい作用機序の心不全治療薬が数多く導入され、症状や生命予後(寿命)の改善が期待されています。

 多くの心不全は完治する病気ではありません。専門施設での診断や治療に加え、その後の長期管理も重要です。そのためにはかかりつけ医の先生方と専門の医師がしっかりと連携し、役割を分担することが必要です。さらに、心不全患者さんは高齢の方や日常生活での制限のある方も多く、さまざまな合併疾患も持たれています。医師以外の医療スタッフも含め、患者さんを中心に、チームとして取り組んでいくこと(地域チーム医療)が、重要だと考えています。

 本連載では、心不全診療の現状とともに、当院と地域の心不全への取り組みも紹介させていただく予定です。

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 倉敷中央病院(086―422―0210)

 かどた・かずしげ 愛媛県立八幡浜高校、京都大学医学部卒業、同大学院医学研究科博士課程修了。京都大学医学部付属病院を経て1984年倉敷中央病院内科、85年同病院循環器内科、2008年より循環器内科主任部長、18年から同病院副院長も兼務。日本心血管インターベンション治療学会専門医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年03月21日 更新)

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