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県内初確認2年 コロナ治療に奮闘 最前線に立つ医師「最善尽くす」

防護服などを身に着け、患者のいるレッドゾーンに向かう神戸=17日、倉敷中央病院

 岡山県内で初めての新型コロナウイルス感染者が2020年3月22日に確認されて丸2年。県内では6度の流行の「波」に襲われ、累計の感染者数は5万8千人を超えた。1日当たりの新規感染者数は減り切っておらず、医療機関には今も症状が悪化したコロナ患者が運び込まれ、救命に向けて医療従事者が奮闘を続けている。倉敷中央病院(倉敷市美和)で、コロナ治療の最前線に立つ呼吸器内科医の神戸(こうべ)寛史(30)の姿を追った。

 「容体が悪くなっています。集中治療室(ICU)への移動が必要になりそうです」

 県内に流行「第4波」が襲来した昨春。感染症病棟の看護師から神戸のPHSに緊急連絡が入った。急変したのは60代男性患者。コロナ感染による肺炎が悪化し、数時間前に酸素を体内に取り込むための医療機器を装着したばかりだった。

 医療用防護マスク「N95」や防護服などを身に着けた神戸は、感染者の治療を行っている「レッドゾーン」へ。患者は会話こそできるが、血中の酸素飽和度が著しく低下し、ぐったりしている。

 すぐに強制的に酸素を送り込む人工呼吸器を装着。神戸は先輩医師と相談し、肺の炎症を抑えるステロイド薬の投与量を増やした。患者は一時持ち直したものの、その後の症状の悪化を食い止めることができず亡くなったという。

 コロナだけでなく、他の疾患の患者の主治医も務める神戸。多い時には合わせて10人ほどを担当する。流行の波が来ると、非感染者が入院する「グリーンゾーン」と「レッドゾーン」を行ったり来たりする毎日に。防護服だけでなく、マスクの付け替えなども必要だ。「さして時間はかからないが、精神的な負担は思った以上に大きい」と神戸は言う。

 変異を繰り返し、その都度違う「顔」を見せる新型コロナウイルス。昨年4~6月の「第4波」では、重症化した患者が次々に運び込まれた。ピーク時は専用病床26床のうち、重症用2床を残して埋まり、同病院の医療提供体制はぎりぎりの状況に追い込まれた。

 感染力が強いオミクロン株による今年1月からの「第6波」ではコロナ感染を機に糖尿病、慢性腎臓病といった持病を悪化させる高齢患者が目立つようになった。同病院の医療従事者が感染者または濃厚接触者となり、2月下旬には出勤停止が約50人に上った日も。忙しさは「第4波」の時と同じだったという。

 オミクロン株よりさらに感染力が強いとされる同株の派生型「BA・2」も出現。「第6波」が収まりきらない中、次の波の到来も懸念されている。

 「患者さんの症状は一人一人違う。これまでの経験を生かし、コロナに打ち勝てるよう最善を尽くしていきたい」。神戸は力を込めた。

=文中敬称略
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年03月21日 更新)

タグ: 倉敷中央病院

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