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(1)総胆管結石、胆のう結石 岡山赤十字病院胆膵内科部長兼消化器内科副部長 原田亮、消化器外科副部長 杭瀬崇

原田亮氏

杭瀬崇氏

 ■総説

 胆石や膵(すい)のう胞、胆のうがん、胆管がん、膵臓がんは最近増加傾向にあり、また専門的な検査・治療が必要なため注目されている領域です。当院ではより専門的な診療を行うため4月より「胆膵内科」を立ち上げることとなりました。今回は5回の連載で消化器内科(胆膵内科)・消化器外科(肝胆膵外科)の専門医が胆石からがんまでの疾患のポイントや当院における取り組みについて述べさせていただきます。

 ■胆石とは

 胆石とは、肝臓や胆のう、胆管にできる石のことを指します。肝臓でつくられた胆汁(消化液)の通り道を胆道といい、肝内胆管、胆のう、総胆管などに分けられます。胆石はこの胆汁成分が固まったものであり、結石のできた場所により肝内結石、胆のう結石、総胆管結石という名前がついていて、それぞれ症状も治療も異なります。

 ■総胆管結石

 総胆管結石には胆のうで発生した石が落下してきたものと総胆管で発生した石の二通りがあります。このため胆のうから落下してきている場合は、総胆管結石の治療に併せて、再発予防に胆のう摘出術も必要となります。総胆管結石は発見時に症状がなくても今後症状が出る可能性が高く、治療の必要があります。

 (1)症状 無症状の場合もありますが、石が胆管の流れをふさぐことにより腹痛を生じます。細菌感染を伴うと発熱を認め、この場合には緊急の入院・治療が必要となります。

 (2)検査 総胆管結石の検査には腹部超音波・CT・MRIという検査があります。これらで小さい石などは指摘できないことがあり、当院では超音波内視鏡という先端に超音波装置がついた内視鏡(胃カメラ)で総胆管結石があるかを詳しく調べる検査も行っております。鎮静剤を使って苦痛がないように行います。

 (3)治療 内視鏡的胆管結石除去術を行います。これは専用の内視鏡(胃カメラ)を使って胆管の出口である十二指腸乳頭部を広げた後、処置具を用いて結石を取り除く治療法です。近年ではさまざまな処置具が出てきており、内視鏡治療でほとんどの結石を取り除くことができます。

 ■胆のう結石

 肝臓でつくられる胆汁という消化液がさまざまな原因により胆のうの中で結晶となり石ができます。胆石の形成にはいろいろな要素が関与しますが、体質や食生活が主な原因とされています。

 (1)症状 みぞおち付近の上腹部に激しい腹痛(胆石発作)が起こります。脂肪分を多く摂取した後などは特に、胆石発作が起こりやすくなります。また、胆石が詰まった状態が続くと細菌感染が起こり、急性胆のう炎を発症します。

 (2)治療 無症状では経過をみていただいて問題ありませんが、症状のある場合はおなかに小さい穴を開けて行う腹腔鏡下(ふくくうきょうか)胆のう摘出術が第一選択となります。難易度の高い手術ではありませんが、胆のう炎や開腹手術後の患者さんに対する手術の際には高度な技術を要する場合があります。当院では肝胆膵がんに関する豊富な専門的知識と経験をもとに、安全で確実な腹腔鏡下胆のう摘出術を行っております。

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 岡山赤十字病院(086―222―8811)

 はらだ・りょう 岡山大学医学部、同大学大学院卒。広島市民病院、岡山済生会総合病院、手稲渓仁会病院(札幌)、岡山大学病院などを経て2014年より岡山赤十字病院勤務。日本内科学会総合内科専門医・認定医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、日本消化器病学会専門医・指導医、日本胆道学会指導医など。

 くいせ・たかし 岡山大学医学部、同大学大学院卒。岡山済生会総合病院、広島市民病院、岡山大学病院などを経て2021年より岡山赤十字病院勤務。日本外科学会専門医・指導医、日本消化器外科学会専門医・指導医、日本肝胆膵外科学会高度技能専門医・評議員、日本移植学会認定医、がん治療認定医機構がん治療認定医など。杭瀬崇氏
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年04月18日 更新)

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