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(5)精神科訪問看護の視点から 万成病院訪問看護岡山リハケアステーション看護課長 三島吉智

訪問時は笑顔であいさつ

お薬の飲み方指導

三島吉智氏

 ■利用者の背景

 「この家が一番好きなんじゃ! 買い物は便利。近所の人もよぉしてくれるんじゃ」

 A子さんは口癖のように話します。訪問看護は、心の病を持つ方々が地域の一員として、安心して自分らしい暮らしを送ることができるよう、地域医療の一役を担っています。

 心の病を持って療養している利用者にとって、自宅はもっともくつろげる環境ですが、心の病が長く続くと、それまでに積み上げてきた人間関係、仕事や趣味などの活動、友人知人との交流が少なくなっていきます。孤独は社会からの孤立を生み、心のバランスを崩しやすくなります。暮らしの中で、一つ一つ日常生活が億劫(おっくう)になったり、関心が向かなかったりと、生活の豊かさが失われがちです。

 ■精神科に特化した訪問看護

 訪問看護では、心身の様子を観察し、規則正しい服薬ができる医療的支援のみならず、定期的に訪問する中で、日々に思うことや考えること、困っていることなどを自由に表現してもらい、思いや考えに共感しながら、暮らしの中でのやりがいや豊かさ、充実や癒やしに向くように各種福祉サービスの利用を勧め、日中の活動先の紹介もしています。

 具体的には、着替えの促しや布団を干して快眠へつなげるなど、暮らしの中でできる支援や、一緒に散歩をしての気分転換など多岐にわたっています。

 利用者も、その方らしい健康な暮らしを保つことができれば、再入院を予防できるのではないかと考えています。

 ■コロナ禍で

 今回のコロナ禍では“人と人との接触を避ける”などの感染防御が推奨されますが、元々人とのつながりが少ない利用者にとっては、情報が減少し不安は強まっていました。その中でなじみの看護師が訪問すると「おっ! 来てくれたんじゃなあ!」と安心した表情を見せてくださいました。日々の訪問看護の“つながり”を保ち、思いを受け止めたうえで、感染対策を具体的に伝えて感染を予防して、正しくウイルスを恐れる共同作業を継続しています。

 ■精神科病院併設の訪問看護ステーションとして

 前述のA子さんは、時に元気になりすぎて短期間の入院をされます。当訪問看護ステーションは万成病院の併設ですので、速やかに主治医をはじめスタッフ間、各部門・関連施設で情報を共有し、円滑な入院から早期の退院へと継続的な医療提供を行っています。加えて、自宅でも病棟でもなじみの職員が支援しており安心感を得ていただいています。

 訪問看護も「精神科医療からの町づくり」の一役を担い、コロナ禍での地域生活を支援して「ひろがれ! 笑顔」に寄与していきます。

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 万成病院(086―252―2261)

 みしま・よしとも 岡山看護専門学校卒業。1989年、万成病院に入職。精神科病棟で18年間、病棟師長を務める。2018年、病棟を離れ精神科デイケア勤務。20年から訪問看護岡山リハケアステーション兼務。看護課長。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年04月18日 更新)

タグ: 精神疾患万成病院

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