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21年梅毒患者 岡山県内159人 2年連続減も高止まり続く

江口武志医長

 2021年に岡山県内の医療機関から報告のあった梅毒患者数は159人(暫定値)に上ったことが、県のまとめで分かった。現在の届け出方式となった1999年以降最多だった2019年の190人から2年連続で減少したものの、高止まりが続く。専門家は風俗店(派遣型を含む)の利用やSNS(交流サイト)を介した安易な性行為が要因と指摘しており、県は注意喚起を行っている。

 県によると、患者数は前年(162人)から3人減り、男性100人(前年104人)、女性59人(同58人)。男性は30代と40代が各28%、20代が18%。女性は20代が過半数の58%で、30代が15%、10代が9%を占めた。感染経路に関する県の聞き取り調査では、男性の半数余りは6カ月以内に風俗店を利用、女性の約4割は風俗店で働いていたという。

 県内の患者数は、17年に前年比4・3倍の172人に急増して以来、高い水準で推移。人口100万人当たりの患者数は17~20年、東京、大阪に次ぐ全国ワースト3位、21年は東京、高知、大阪に続く4位となっている。

 梅毒は主に性行為によって「梅毒トレポネーマ」という細菌が体内に入り引き起こされる。早期の薬物治療で完治が可能だが、適切に治療しなければ臓器に影響を及ぼすほか、妊婦が感染すると死産や赤ちゃんの病気につながる恐れがある。

 症状のないまま進行して感染に気付かないうちに周囲に広げるケースもみられることから、県は今年3月、感染リスクの高い年代に向けた啓発動画「サヨナラ梅毒!」(約5分)を作り、動画サイト・ユーチューブなどで公開。不特定多数との性的接触を避け、性交渉時は避妊具を用いるといった予防法や、無料・匿名で受けられる保健所での検査について改めて周知を図っている。

 今後もこれらの年代への啓発を続ける考えで、県健康推進課は「感染したかもしれないと不安に感じたら、ためらわずに検査や医療機関の受診を」と呼び掛ける。

 新型コロナウイルス対策の影響でほかの感染症が減る中、梅毒は全国的に増加傾向にあり、国立感染症研究所(東京)の統計では、21年の全国の梅毒患者は7873人(前年比2002人増)と過去最多を更新している。

SNS通じ低年齢化進む
岡山赤十字病院 江口・産婦人科医長

 梅毒患者の治療に当たり、感染動向に詳しい岡山赤十字病院(岡山市北区青江)の江口武志・産婦人科医長に聞いた。

 国内の梅毒患者は、2012年ごろから東京、大阪などの大都市で増え始め、県内在住者がそれらの場所の風俗店を利用したり、感染した女性が県内の風俗店で働いたりして、その後、岡山でも広がったと思われる。加えて、SNSを通じて出会いの機会が増え、性行動の低年齢化や敷居の低下が進んでいることも拡大の要因として考えられる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年04月19日 更新)

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