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舌下免疫療法 岡山大・岡野助教授が臨床治験 花粉症治療に成果 患者負担の少なさが利点

岡野光博助教授

スギ舌下免疫療法による症状スコア平均値の推移(グラフ)

 厳しい寒さが和らぎはじめ、花粉症の人にはつらい季節がやってきた。二月下旬に岡山市内で行われた岡山大病院治験センター主催の市民公開講座で、スギ花粉症への免疫療法などについて発表した同病院の岡野光博助教授(耳鼻咽喉(いんこう)・頭頸(けい)部外科学)に、現在取り組んでいる同療法や、臨床治験中の新しい「舌下免疫療法」について解説してもらった。

 スギ花粉症などへの治療法は、抗ヒスタミン薬やステロイドを用いる薬物療法やレーザー手術がよく知られているが、岡野助教授は「これらが対症療法的なのに対し、免疫療法は体質改善による根本的な治療成果が期待できる」と話す。

 免疫療法では、スギ花粉のエキスを週一回の通院で注射、三、四カ月かけて徐々に濃度を高め、その後も約三年間一定量の注射を続けていくのが一般的な方法。そのほか手術後の治療などとして、入院し一日一~五回の注射で数日の間に花粉エキスの濃度を上げていく「急速免疫療法」も行われる。

 岡山大では患者の症状に応じて免疫療法と薬物療法、手術を組み合わせ、花粉症治療に成果を上げている。

 ただ一般的な免疫療法は注射のための通院期間が長く、患者の負担が大きいのが難点。ぜん息の発作など副作用の恐れがあるため、予防薬を使いながら医師の十分な管理の下で治療しなければならない。急速免疫療法の場合は特に副作用への注意が必要だ。

 臨床治験中の舌下免疫療法は、食パンなどにエキスを染みこませ、舌の下に一回約二分間含むだけの簡単な方法。「注射と異なり家庭でも実施可能な上、大量投与ができ、ぜん息の副作用も起きにくいなどメリットが多い」と岡野助教授。ヨーロッパでは千例を超す治験が行われ、全身性の大きな副作用の報告はないという。

 日本では現在全国八大学でスギ花粉症での臨床治験が行われている。中国地方以西で唯一治験に参加している岡山大では、二〇〇四年十二月から花粉症患者九人を対象に実施。六人に実薬(花粉の入っているエキス)を、三人にプラセボ(花粉の入っていないエキス)を舌下療法で投与し比較した。

 その結果、スギ花粉が大量飛散していた〇五年三月から四月上旬にかけ症状のつらさの程度を示すスコアの平均値が、プラセボを投与した人が6前後あったのに対し、花粉の入った実薬を投与した人は3前後と、症状の程度に明らかな差が見られた。

 同大では、今シーズンも患者十人を対象に臨床治験を行っている。岡野助教授は「少ない患者数での臨床治験ながら、予想以上の成果がみられた。数年での実用化を目指し研究を進めていきたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年03月04日 更新)

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