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医療機関の認知症診断説明不十分 8割は経済支援知らされず

 認知症診断時に医療機関から受ける説明は、患者らの希望に応えられていないことが、岡山県などに住む認知症の人や家族を対象にしたアンケートで分かった。特に医療費といった経済面の支援制度に関する事柄は、8割以上の人が知らされておらず、治療薬の副作用や介護サービスの種類、要介護認定の手続きといった基礎的な項目でも説明された人は6割程度にとどまっていた。家族らがほしい情報が十分に得られていない現状が浮き彫りになった。

 医師や医療機関の職員から説明がなかった項目をみると、「進行に伴い利用できるかもしれない経済面を支援する制度」が最多で87・4%だった。「障害者手帳の説明」(87・0%)、「通院にかかる医療費」(85・2%)と続いた。

 医療費軽減に関する制度や介護サービスの利用にかかる費用についても、ほとんどの人が伝えられていないことから、経済的な支援に関する対応は軒並み低調とみられる。

 さらに相談できる窓口の紹介や、病状に変化があった場合の相談方法といった事柄も教えられた人は3割程度だった。医療機関では診断名や治療内容、病状の変化など医療的な説明はするものの、将来の生活や不安の解消までは配慮が及んでいないようだ。

 調査を実施した岡山県立大保健福祉学部の竹本与志人(よしひと)教授は、約15年前に自ら社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員として認知症患者・家族のケアをしていた経験から「専門医をはじめ、社会福祉士や精神保健福祉士といったソーシャルワーカーらの数は増え、施設や制度も充実しているはずなのに、なぜ支援できていないのか不思議だ」と疑問を投げ掛ける。

 「診断を受けた患者や家族は何も分からず、不安を募らせる。支援の説明が不十分なら、世間から放り出されたような気持ちになるのではないか」と指摘し、「医療・福祉の側は、患者らがどのような時期に何をすべきか伝えることが重要。調査して終わりではなく、当事者らの声を代弁する活動の必要性を感じている」と話していた。

 調査は竹本教授らのグループが、認知症の人や家族の視点から受診援助の実態を明らかにするために実施。岡山、兵庫県、大阪府の地域包括支援センターや居宅介護支援事業所などを通じて、認知症の利用者や家族計277世帯から回答を得た。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年05月06日 更新)

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