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認知症診断、家族の当惑深刻 支援の仕組みづくり急務

若年性認知症の本人と家族、サポーターらが集う「はるそら」。経済的な支援の必要性など、抱える悩みを吐露する=4月27日、岡山市北区

 認知症診断時に医療機関から受ける説明は、患者らの希望に応えられていないことが、岡山県などに住む認知症の人や家族を対象にしたアンケートで分かった。特に医療費といった経済面の支援制度に関する事柄は、8割以上の人が知らされておらず、治療薬の副作用や介護サービスの種類、要介護認定の手続きといった基礎的な項目でも説明された人は6割程度にとどまっていた。家族らがほしい情報が十分に得られていない現状が浮き彫りになった。

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 認知症の当事者や家族に対する経済的な支援制度を説明する必要性は、以前から指摘されていた。特に若年性認知症では、家族が途方に暮れるケースは多い。50代前後の現役世代が患者となり、突然、経済的な支柱を失う家族の当惑は深刻だ。

 若年性認知症の当事者と家族、支援者らでつくる一般社団法人・はるそら(岡山市北区駅前町)の代表・多田美佳さんも、そうした悩みを経験した一人だ。

 夫は42歳の時、物忘れがひどくなるなど生活に支障が出て若年性認知症との診断を受けた。介護だけでなく、生活、住宅ローン、教育費などの経済的な問題を抱え、心配が募った。自分が仕事に出ることで、負担は2人の子どもたちにものしかかり、学校から帰ると介護や家事をするヤングケアラーとなってしまった。支援を求めて関係機関にも相談したが、期待した情報は得られなかったという。

 昨年、はるそらと岡山市高齢者福祉課が協働で行った調査でも同様の“不備”は明らかになっている。医療費軽減に関する説明を必要とした人は「少し」と「とても」を合わせて8割以上を占めたのに、実際に説明があったのは3割にも満たなかった。「今後進行に伴い利用できるかもしれない、経済面を支援する制度の説明」と「相談できる窓口の紹介」も3割ほどしか説明されていない。

 多田さんは「関係機関は当事者や家族の声を聴き、心理面や生活面の不安を取り除く仕組みづくりを早急に進めてほしい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年05月06日 更新)

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