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(2)膵のう胞 岡山赤十字病院消化器内科医長兼胆膵内科医長 秋元悠

秋元悠氏

 今回は、健診のエコー検査でよく見つかる膵(すい)のう胞についてお話します。

 膵のう胞とは、膵臓にできた液体がたまった袋のことを言います。膵のう胞には、腫瘍性ののう胞と非腫瘍性ののう胞に分かれます。ここでいう腫瘍とは、大腸のポリープみたいな良性の腫瘍からがんのような悪性腫瘍も含みます。

 非腫瘍性ののう胞(膵仮性のう胞など)は、がん化する心配はありませんが、感染したり出血したり症状がでる場合は治療が必要となります。腫瘍性の膵のう胞は数種類あり、悪性度の高いものから治療不要の良性の腫瘍まであります。

 下記に代表的な膵のう胞について、疾患のポイントと当院における取り組みについて述べさせていただきます。

 (1)膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)

 一番頻度が多いのう胞で、膵液が通る道(膵管)に腫瘍が発生し粘液を出してのう胞を作ります=図1

 メインの通路となる主膵管に直接のう胞を作る主膵管型と、主膵管から分岐する膵管の枝にのう胞を作る分枝型があり、主膵管型では半分が悪性であるのに対して、分枝型は2割が悪性と言われています。主膵管型は原則手術が推奨されており、分枝型の中でも悪性を疑う所見を認めた場合は手術が推奨されます。

 一方、これらの悪性を疑う所見がない場合は経過観察となりますが、のう胞ががん化するリスクもあり定期的な画像検査が必要となり、当院では基本的には半年ごとにMRIもしくはCTや超音波検査で経過観察を行っております。また、経過観察中に変化がある場合は、超音波内視鏡やERCP(膵液を採取し細胞を調べる検査)にて精査を行っております。

 (2)粘液性のう胞腫瘍(MCN)

 IPMNと同様に粘液を産生する腫瘍で、中年の女性の方に多く、膵臓のしっぽ側(尾部)に好発します。悪性のリスクが高いため、原則手術をお勧めしています。

 (3)漿液(しょうえき)性のう胞腺腫(SCN)

 さらさらの液体(漿液)を含む小さなのう胞が集まった腫瘍で、悪性化のリスクは低く原則手術は不要で定期的に画像検査を行います。

 (4)膵仮性のう胞(非腫瘍性のう胞)

 外傷や手術、膵炎により膵液が流れる道(主膵管)が破れたり狭くなったりすることにより膵液がおなかの中に漏れたりして袋を作ることがあります。約6割が自然に小さくなっていきますが、大きくなっていく場合や出血や感染した場合は、内視鏡を使って膵のう胞の中にステントというチューブを入れて、たまった液を胃の中に出してあげる必要があります=図2―(1)。また膵管そのものに異常がある場合は内視鏡を使ってステントを入れることもあります=図2―(2)。当院でも膵仮性のう胞に対して超音波内視鏡やERCPによる治療も行っています。

 以上、代表的な膵のう胞についてお話ししました。膵のう胞は、さまざまな種類があり悪性度も異なるため専門的な知識や判断が必要となります。当院では今年4月より胆膵内科を立ち上げ肝胆膵外科と協力し専門的な診療を行っております。膵のう胞でお困りの際は、ご相談下さい。

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 岡山赤十字病院(086―222―8811)

 あきもと・ゆたか 愛媛大学医学部、岡山大学大学院卒。岡山赤十字病院で初期研修。倉敷中央病院、広島市民病院、岡山大学病院、岩国医療センターを経て2020年より岡山赤十字病院勤務。日本内科学会総合内科専門医・認定医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、日本消化器病学会専門医、日本胆道学会指導医、日本膵臓学会指導医など。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年05月16日 更新)

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